<卓球:全日本選手権>◇第6日◇17日◇東京体育館

 女子のエース石川佳純(21=全農)が、平野早矢香(ミキハウス)と組んだ女子ダブルスで2連覇を果たし、54年ぶりの全日本3冠に王手をかけた。決勝で高校生ペアの阿部愛莉・森薗美月(大阪・四天王寺高)組をフルゲームの末に振り切り、15日の混合ダブルス優勝に続く2冠目。今日18日の女子シングルスで、1960年度の山泉和子以来、史上2人目の偉業に挑む。

 石川が苦しみ抜き、女子ダブルスも頂点を勝ち取った。決勝で若さあふれる18歳ペアを3-2で退けると、12歳からペアを組む平野と抱擁した。「ふう~」と大きな息を吐き、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 「いやあ、強かったです。思った以上に思い切ってぶつかってきた。こんなに早く年下ペアとばかり対戦すると思っていなかった。初めての経験でしたが、向かっていく意識が優勝につながったと思う」

 前日16日の5回戦でも伊藤美、平野美の14歳ペアにフルゲームの大苦戦。準々決勝では妹の17歳・梨良(りら)、15歳・加藤美組に第1ゲームを落とすなど、重圧を実感した今大会だ。「私だって21歳ですけれど」と苦笑いしながらも「プレッシャーは自分が今まで勝ち取ってきたもの。それは自信に変えています」。女子卓球界のエースとしての自覚が身についてきた。

 代表合宿などで後輩との交流も意識的に増やした。妹梨良や、JOCエリートアカデミーの選手と風呂に入ることも。裸の付き合いで本音を引き出す「佳純先生」の湯けむり授業が、代表の女子力アップにつながっている。梨良も「『早く同じ舞台に立とう』と分かりやすく教えてくれます」と感謝。今大会の若手躍進は石川にも喜びだ。昨年5月の世界選手権団体銀メダル、12月の世界ツアー・グランドファイナル優勝など結果でも先頭に。世界ランクも自己最高4位になった。

 シングルス準々決勝では伊藤美にわずか30分でストレート勝ちを収め、貫禄を見せつけた。そして今日18日は準決勝、決勝を控える。3冠を達成すれば、世界選手権5冠など日本代表の「レジェンド」山泉和子(現姓伊藤)以来、54年ぶり史上2人目の快挙となる。くしくもこの日は、伊藤さんの80歳の誕生日だった。

 「苦しい試合に勝ったことは次につながる。シングルスでは声を出し、自分に負けないプレーをしたい」。10歳での初出場から11年。21歳にして不動の地位を築きつつある石川が、新たな偉業に挑む。【鎌田直秀】

 ◆山泉和子(やまいずみ・かずこ)現姓・伊藤和子。1935年(昭10)1月17日、大阪府生まれ。愛媛・津島高-大阪樟蔭女子大。世界選手権に6度出場、59年にダブルス、63年に混合ダブルス、女子団体で3度優勝。67歳で出場した02年の全日本選手権で、54年の初勝利から約半世紀もかけ、同大会シングルス通算100勝を達成。11年に世界卓球殿堂入り。生涯現役にこだわり、今も練習を欠かさない。現在は実業団のエクセディ総監督。