<卓球:全日本選手権>◇最終日◇18日◇東京体育館◇女子シングルス決勝

 21歳の石川佳純(全農)が史上最年少で全日本3冠を達成した。1960年度の山泉(現姓伊藤)和子以来、54大会ぶり2人目の偉業。準決勝で前田美優(18)をフルセットの末に退けると、決勝は森薗美咲(22)に4-1で勝利した。世界選手権(4月26日開幕、中国・蘇州)の選考会を兼ねた今大会を終え、今日19日には代表発表。女子卓球界のエースが、次は世界の頂点に挑む。

 石川が歓喜と安堵(あんど)の涙を流した。15日の混合ダブルス、前日17日の女子ダブルスに続き、森薗との決勝に勝った。3冠を達成した瞬間、右手で口を覆った。13年秋から指導を受けている陳コーチに駆け寄り、顔をくしゃくしゃにして抱き合った。「えっ、こんなに?

 って思うほどの重圧と緊張。苦しんだ試合の連続。その中で方法を見つけて勝てたのがうれしかったけれど、長い1週間だった」。2年連続でつかんだ皇后杯を掲げた。

 準決勝では、18歳の前田に思いきりよくフォアを打ち込まれ、うまく対応できなかった。1-2とリードされた第4ゲーム、9-9とされタイムアウト。コーチの言葉を覚えていないほどパニック状態のまま11-13と落とした。だが、第5ゲーム前に自問自答。「追い込まれた場面、ここからが勝負だと思った。自分に大丈夫と言い聞かせた」と覚悟を決めた。「狙っていた」バックスマッシュで先制し、一気に乗った。最終ゲームで8-9となっても、相手のバックを攻めて3点を奪い大逆転した。

 決勝も第3ゲームからバックとバックの戦いに持ち込んだ。無回転サーブを交ぜ、森薗のレシーブを崩し始めた第4ゲーム。1-2からの同点スマッシュで波を引き寄せ「ヨオ~」と叫び、拳を握った。

 母久美さんには、クリスマス、そして正月にも「今までも3冠を目指してきたけど、今回は絶対にとりにいくから」と宣言していた。昨年逃した悔しさと、国際大会で同等ランクや格下に取りこぼさない予行演習として、自分に重圧をかけた。今大会は初めて対戦相手全員が年下。「想像以上に向かってきた。思いきり打ち込まれた。格上相手には自分から思いきりいけるけれど、下の選手に耐えて負けないことも大事。引き出しは多くなった」。粘り抜き、最後まで勝ち切ったことが3冠の価値だった。

 4月には世界選手権が待つ。「去年の優勝と違った1歩を踏み出せた。日本一、3冠の自信を胸に、メダルをとりたい。中国の選手にも勝てるように」。強い気持ちと、粘り強さで3冠をつかんだ。「もっともっと強い石川佳純で戦いたいと思います」。世界の頂点をつかむまで、満足はない。【鎌田直秀】

 ◆1960年(昭35)度の3冠

 山泉和子(現姓・伊藤)が24歳で達成。シングルスを制した後、設楽義子と組んだ女子ダブルス、村上輝夫と組んだ混合ダブルスで制した。