<テニス:全豪オープン>◇28日◇メルボルン◇男子シングルス準々決勝

 世界5位で、4大大会初優勝を狙った錦織圭(25=日清食品)が力尽きた。14年全米準々決勝の再現となった前年覇者で同4位のワウリンカ(29=スイス)に、3-6、4-6、6-7の2時間4分で敗戦。32年佐藤次郎以来、日本男子全豪83年ぶりの4強入りを逃した。次戦は、3連覇がかかる2月9日開幕のメンフィスオープンに出場する。

 錦織の放ったフォアのドロップショットが、きれいな弾道でネットに向かった。第3セット、タイブレークの6オール。誰もが息をのんだ瞬間、黄色いボールはネットの白帯に当たり、錦織側に弾んだ。「一番悔やむ。あそこでミスしてしまったのが精神的につらい」。座り込む錦織。戦いは、次に相手のサービスエースで幕を閉じた。

 タイブレーク1-6から5本のマッチポイントをはね返し、6オールに追いついた。自分のサーブで、取ればセットポイントだった。流れがようやく錦織に来た瞬間だった。「あれを取っていたら、自分の中で何か変われた可能性もあった」。しかし無情にも、ネットは錦織の球を嫌った。

 すべては第1セットの第4ゲームに詰まっていた。決め急いだ錦織は、フォア3本、バック1本の凡ミスで、自分のサービスゲームを落とした。ワウリンカは何もしていない。「最初、(打った)感触が良くなかったので焦ってしまった」。これで、相手を勢いづかせた。

 重圧があったのは、ワウリンカの方だ。昨年優勝で、錦織の早い展開を苦手と公言するだけに、やりにくかったはずだ。最後のタイブレークで、勝ちが見えた瞬間、守りに入った姿は、第1、2セットのワウリンカではなかった。早めに、その状況に錦織は追い込みたかった。そうすれば、あのドロップショットも入っていたに違いない。

 敗れたが、新たな経験を手にした。コーチらを含む「チーム・ケイ」の誰もが、世界5位という追われる立場に慣れるには時間がかかると口をそろえる。「今までにない経験ができたグランドスラムだった」。もちろん「ベスト8は満足できる結果ではない」。

 今年は、まだ始まったばかりだ。残された4大大会は全仏、ウィンブルドン、そして全米の3大会。他のツアーの大会も残されている。「これからトップ10にも勝っていかないといけない立場」。その思いが、必ず花を咲かせる時が来る。【吉松忠弘】

 ◆錦織の最新世界ランク

 2月2日に発表される最新世界ランキングで、錦織は最高4位、最低6位の可能性がある。4強が出そろった時点で計算すると、錦織は4位。マリーが5位、ベルディハが7位、ワウリンカが9位だ。ジョコビッチとベルディハの決勝になり、ジョコビッチが優勝なら、錦織は4位。ワウリンカとマリーの決勝で、ワウリンカが優勝すると6位になる。

 ◆WOWOW放送予定

 29日午前11時25分~、午後5時20分~、WOWOWライブ。第11日男女シングルス準決勝ほか。生中継。放送時間変更の場合あり。