<テニス:全豪オープン>◇1月31日◇メルボルン◇車いす男子シングルス決勝

 車いすテニス男子シングルスで、世界1位の国枝慎吾(30=ユニクロ)が、自身初の4大大会単複全制覇に向け、まずは全豪2冠に輝いた。同2位のウデ(フランス)を6-2、6-2の1時間11分で下し、全豪3連覇で8度目の優勝を遂げた。

 世界2位のウデとさえ、レベルが違った。リターンゲーム(サーブを受ける側)にもある程度の分がある車いすテニスで、1度もブレークを許さず、4ゲームしか落とさない圧勝。「どんな勝利でも、毎回、優勝は最高の気分」。勝利の瞬間、雄たけびとともに両手を突き上げた。

 錦織圭をほうふつさせるような前陣速攻で畳み掛けた。特にリターンでは、サービスラインの間際で、ウデの強サーブを捉え、リターンエースを連発した。普通のテニスでも高度な技術だが「ウデが世界一のサーバーなら、僕は世界一のリターナー」と、苦もなくこなした。

 その速攻リターンで、両セットとも最初にウデのサービスゲームを破った。完全に流れをつかみ、そのまま国枝の独壇場。「今日はいいテニスができた。満足している」と、昨年7月のスイスオープン準々決勝で敗れて以来、シングルス32連勝をマークした。

 昨年12月27日から10日間の沖縄合宿を張った。「もっとパワーアップした自分になりたい」と、年末年始を返上し、基礎練習に明け暮れた。目的は体の軸を保つための体幹強化だ。軸をしっかりすることで、打球時のバランスが崩れない。うまく球に力が加わり、パワーも出る。

 飽くなき向上心で、狙うのは4大大会単複全制覇だ(ウィンブルドンはシングルス実施せず)。世界1位、シングルスで4大大会年間全制覇、パラリンピック3個の金メダルと、車いすテニス界の歴史を塗り替えてきた。しかし、年間で4大大会単複をすべて制したことはない。「できれば最高の記録になる」。

 来年はリオデジャネイロ・パラリンピックも控える。パラリンピックでも、まだ単複同時金メダルはない。20年東京パラリンピックの挑戦も公言しており、「まだまだ多くの引き出しをつくって強くなりたい」。今年も日本が誇る世界王者は揺るぎない。【吉松忠弘】<国枝慎吾(くにえだ・しんご)アラカルト>

 ▼生まれ

 1984年(昭59)2月21日、千葉・柏市。

 ▼野球少年

 地元柏市の少年チームで始めて、ポジションはファーストだった。

 ▼発症

 9歳で脊髄腫瘍を発症。車いすの生活が始まる。

 ▼車いすテニス

 車いすバスケットをプレーしていたがチームがなく、11歳で近所のクラブで車いすテニスを始める。

 ▼パラリンピック

 04年アテネ大会初出場でダブルス金メダル。08年北京、12年ロンドンでは、シングルスで男子史上初の連覇を達成した。

 ▼4大大会

 07年に、シングルスで年間4大大会全制覇。男子史上初の快挙。

 ▼プロ転向

 09年4月に、日本車いすテニス史上初のプロ選手となる。ユニクロと所属契約を結んだ。

 ▼107連勝

 07年11月のマスターズ準決勝で敗れてから、10年11月同大会準決勝で敗れるまで、シングルス107連勝。シングルス3年無敗を成し遂げた。

 ▼フェデラー

 年間4大大会全制覇の可能性を問われた時、「クニエダの方が先に取る」と話し、その通りになった。

 ◆WOWOW放送予定

 1日午後5時15分~、WOWOWライブ。最終日男子シングルス決勝ほか。生中継。放送時間変更の場合あり。