<テニス:全豪オープン>◇1日◇メルボルン◇男子シングルス決勝

 世界1位のノバク・ジョコビッチ(27=セルビア)が2年ぶり5度目の優勝を飾った。初優勝を狙った同6位のアンディ・マリーに7-6、6-7、6-3、6-0で勝利。5度の優勝は68年オープン化(プロ解禁)以来、ロイ・エマーソン(オーストラリア)の6度に次ぐ現役最多で単独2番目の多さとなった。元女王のマルチナ・ヒンギスが混合ダブルスで06年以来、9年ぶりの4大大会優勝を果たした。

 鉄人の真骨頂だった。右手親指のケガ、極度の疲れ、乱入者と、困難が立ちはだかっても、ジョコビッチのタフさは音を上げなかった。「集中するのが大変だったけど、最高の気分だ」。オープン化以降最多6度の優勝を誇るエマーソンから銀杯を受け取ると、高々と掲げた。

 第2セットで、ジョコビッチが4-3リードでコートチェンジの時だった。2人の観客が、メッセージを書いた垂れ幕をたらし、コートに乱入した。警備員が飛び出し、両選手をガード。一時は、場内が騒然となったが大事にはいたらなかった。

 それでもジョコビッチの心は乱れなかった。体は疲労の極限だったが「絶対にあきらめなかった」。第3セットから「攻撃に転じた。早くポイントを終わらせることにした」。その言葉どおり、第3セットを奪うと、第4セットは完封で快勝だ。

 昨年7月にエレナ夫人と結婚。10月に長男ステファン君が生まれた。夫、そして父として、初めての4大大会のタイトルだ。「本当に自分を誇りに思う」。今年こそ、残された全仏のタイトルを取り、4大大会全制覇を成し遂げたい。「可能な限り挑みたい」。ジョコビッチの新たな人生が、新たな歴史をつくる。【吉松忠弘】