<バレーボール:全日本高校選手権静岡大会・聖隷クリストファー3-2清水商>◇20日◇男子決勝◇静岡・草薙体育館

 聖隷クリストファーが、清水商にマッチポイントを握られながらも2年生エースの豊田竜之介が打ち切り、5連覇を達成した。優勝校は来年1月5日に開幕する「春高バレー」(東京体育館)に出場する。

 王者が追い詰められていた。第2、第3セットを連取され、後がなくなった第4セットも、19対22と劣勢に立たされていた。豊田がサーブで狙われ、袴田泰広(2年)もスパイクアウトが続き波に乗れない。聖隷の田川明浩監督(44)はタイムを取ると、選手に向かって「大逆転だぞ!」と3回、叫んだ。この言葉が「暗示」となり、袴田が爆発。一気に6連続ポイントで第4セットを奪うと、最終セットもマッチポイントを取られながらも粘って逆転し、V5を成し遂げた。

 聖隷チームには「今に徹せよ」のモットーがある。過去のミスや「ここで決めれば勝てる」などの未来の欲を断ち切り、目の前の1球にベストを尽くすことだ。決戦前日、田川監督は自身が書いた「今に徹せよ」の極意を書面で選手に渡した。大事な局面で立ち直った袴田は「ミスが続いて途中、不安になったけど『今に徹せよ』を思い出して、1球1球に集中することができた。今に徹することができた」と振り返った。

 苦しんだ上でつかんだ全国切符。小粥圭祐主将(3年)は「こういう試合を経験できて自信になった」と力を込め「全国ベスト8に手が届いていないので、最後の大会で力を発揮したい」。「今に徹するバレー」で、ベスト8の扉を開ける。【岩田千代巳】