ロシア戦のMVPは、プロップ稲垣啓太だった。確かにトライしたリーチマイケルや福岡堅樹は良かったが、稲垣の働きは特筆もの。FW第1列としての大事な仕事、スクラムを安定させたのは素晴らしかった。が、高得点の理由はそれだけではない。

とにかく仕事量が多かった。ボールを持てばキャリーを稼ぎ、鋭いタックルで何度も相手を止めた。ボールを持った選手へのサポートも的確だった。スクラムやラインアウトなどセットプレーでの動きも良かったが、何よりフィールドプレーでの動きが光った。

素晴らしいのは、ほとんどミスのない安定したパフォーマンスが最後まで落ちなかったこと。フィットネスの高さは日頃からの積み重ね。その成果が、試合で出た。スクラムばかりが注目されるが、その仕事量はチームの出来にも直結する。「プロップ」は「支柱」の意味。ロシア戦の稲垣は日本の支柱だった。(元日本代表、日刊スポーツ評論家)

(ニッカンスポーツ・コム/ラグビーコラム「今泉チェック」)