日本代表選手の「こだわり」に迫るシリーズ最終回はWTBレメキ・ロマノラバ(29=ホンダ)。常に前向きな男は「トライ」に強いこだわりを持ち、周囲が喜ぶ顔を心待ちにする。日本人の妻と3人の息子を支える大黒柱は、ラグビーでも屈強な相手に動じない。

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三重・鈴鹿市にあるホンダの練習場。クラブハウス周辺の芝生を、レメキの妻恵梨佳さん(32)に見守られた息子3人が駆け回る。6歳の長男はラグビーをしており「結構足が速くて、ハンドオフも強い。俺と似ているよ」。10月末に打ち上げた日本代表宮崎合宿で、金髪のパパは「トライを取らないと子どもに怒られる」と照れながら笑った。

今季、トップリーグでトライ王(8トライ)に輝き、故障で離脱前の10月26日世界選抜戦では、右サイドを力強く突破し有言実行のトライを奪った。レメキは毎度、はっきりと「トライ」と口にする。父はトンガのプロボクサー。今となっては「どっちもやりたかった」と振り返るが、生まれ育った王国ニュージーランドで先にラグビーと出会うのは必然だった。4歳で始め「ボール持ったら、ほとんどトライだった」と流ちょうな日本語で豪語する。

「トライを取った時の周りのリアクションが大好き。代表でも、子どものレベルでも、それは一緒。だからトライ取るのが楽しい」

代表のウエートトレーニングでは、スクラムを最前列で組むフロントローと同組。177センチ、92キロに詰まった筋力が、相手防御の合間をぶち抜く強さにつながっている。だが、その突破を支えているのは技術以上に、心の整え方だという。

16年8月のリオデジャネイロ・オリンピック(五輪)。7人制日本代表だったレメキは、初戦で母国ニュージーランドと相対した。目の前には世界的スターのソニービル・ウィリアムズらがいた。「俺は誰よりも強い」「俺の前に誰がいても関係ない」「あいつらよりも俺だ」。そう心に訴え、歴史的勝利の瞬間には「ハハハ」と笑った。

「1対1なら、絶対に俺が勝つ。多分、その気持ちで今までのラグビー人生があるんだと思う。相手がすごい選手でも、勝負だから、それを楽しまなきゃ」

日本では競技を問わず、相手をリスペクトし過ぎると度々言われる。その点を排除する一方、日本人気質を尊重する。16年秋に初キャップをつかんだ15人制日本代表でも、今やチームのムードメーカーとなった。

来日11年目で挑む19年ワールドカップ日本大会。青写真は既に頭にあり、リオ五輪で銀メダルを獲得した陸上男子400メートルリレーが理想という。「あの時のリレーは10秒切った人がいなかったのに、2位までいった。ラグビーも他の国は強いし、スピードもあるし、スターもいっぱいいる。でも、日本にも世界で一番、強いものがある。全員がハードワークすることと、仲間のために頑張ること。歴史をつくるチャンスだよ」。仲間、家族、ファン…。何より日本全体の歓喜のため、4歳から変わらないトライの快感を求め続ける。【松本航】

日本代表WTBレメキ・ロマノラバ
日本代表WTBレメキ・ロマノラバ