今週はワールドカップ(W杯)に出場する20チームが、大会期間中に過ごす「公認キャンプ地」(23都道府県、61自治体)を紹介する。第1回はアルゼンチン代表を受け入れる福島県。02年にサッカーW杯日韓大会で同代表と縁が生まれ、17年後のラグビーW杯につながった。

      ◇       ◇

02年サッカーW杯日韓大会でアルゼンチン代表をもてなした福島県の熱い思いが、地球の裏側に届いた。ラグビーW杯の日本開催を知った福島県企画調整部のメンバーは、日韓大会時の資料を組織委員会に提出し、公認キャンプ地に立候補。これを読んだアルゼンチンのラグビー協会が同県を再び選んだ。同課の今里英生氏(54)は「当時から携わっていた人たちはとても喜んでいます」と話した。

02年日韓大会の練習会場はJヴィレッジ。11年3月の東日本大震災で、事故のあった福島第1原子力発電所から約20キロの距離にある。県内には被害のあとが残る場所もある中で選ばれたことに今里氏は「来年は東京オリンピック(五輪)もある。風評被害もあった中、スポーツができるということをアピールしたかった」と話した。

福島県川俣町で毎年10月に行われている「コスキン・エン・ハポン」(開催事務局提供)
福島県川俣町で毎年10月に行われている「コスキン・エン・ハポン」(開催事務局提供)

実は以前からアルゼンチンとの交流を図っていた町がある。市内から20キロほど離れた人口約1万3000人の川俣町では75年から毎年10月に、国内最大級の中南米音楽祭「コスキン・エン・ハポン(日本のコスキンの意)」を開催している。同国のコスキン市で行われる音楽祭にならい、ケーナ(竹製の縦笛)などの音色を響かせて「コンドルは飛んでいく」などの曲を演奏するもので、現在は開催は40回を超え、3日間でのべ6000人が訪れる。

ケーナの音色はアルゼンチンでは誰もが知っており、日韓大会ではJヴィレッジで演奏した。「コスキン-」の斎藤寛幸事務局長(63)は「バティストゥータ、オルテガら選手たちは大喜びだった。その後も日本での試合にツアーを組んで見に行ったこともある」と話す。同町には今でもアルゼンチンの文化が根付いている。

ラグビーW杯でも同じおもてなしで出迎える。斎藤氏は「地球の反対側に来て、自国の音楽でお祝いされたらうれしいと思う」と語る。音楽祭の行われる10月は大会の真っただ中。「みんなで応援に行ったり、パブリックビューイングで盛り上げて、音楽祭につなげたい」と意気込む。さらに同町では8月1日を「アルゼンチンの日」として大使館の人を講師に迎え、小学生中心に、文化、風土などを教えるイベントも行う。

福島にまたアルゼンチン代表が来ることに斎藤氏は「縁がありますね。日本でアルゼンチンを応援している町はあまりないと思う。スポーツや音楽に国境はない」と話している。【松熊洋介】