日本のライバルになるスコットランド代表は、長崎市で大会期間中に合宿を行う。アバディーン市と友好関係がある長崎市には、スコットランド特有の格子柄をアレンジした「長崎タータン」がある。スコットランド代表は、このチェック模様をユニホームに入れることを決めた。長崎市の関係者は、1次リーグ突破をかけて戦うことになるかもしれない日本-スコットランド戦で両チームを応援する。

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今年4月、長崎市にビッグニュースがもたらされた。同市は10年にスコットランド北西部の「アバディーン市」と友好関係を結び、交流を続けてきた。スコットランド協会のマーク・ドットソンCEOが来日し、「長崎タータン」を同代表のユニホームの襟の裏につけて臨むと発表した。

県選抜チームのユニホーム(長崎市スポーツ振興課提供)
県選抜チームのユニホーム(長崎市スポーツ振興課提供)

「タータン」はスコットランド特有のチェック柄の模様。長崎タータンは、16年8月にスコットランドのタータンを管理する協会からデザインを寄贈された。県ラグビー協会のカラーである緑をベースに、市の花であるアジサイをイメージした紫を入れて作られた。中高生や県選抜のユニホームに取り入れられており、ネクタイやハンカチなどを県内の試合で販売している。長崎市スポーツ振興課の山戸俊一さん(30)は「意味のあるタータンなのでうれしい。長崎市のレガシーです」と語る。

長崎市は、全国で最初に事前キャンプ地に内定した。15年イングランド大会で現地の子どもたちとラグビーの試合を行うなど長崎をPR。同年12月にドットソンCEOらが視察に訪れ内諾した。交流のきっかけは1859年に訪れたグラバー氏にまでさかのぼる。同氏は西洋式ドック(造船のための設備)を建設し、造船の街としての礎を築くなど長崎市の発展に貢献。現在庭園として公開されているグラバー邸は、従業員の制服やごみ箱にタータンのデザインが入り、国の重要文化財に指定されている。母国の人物を今もたたえる長崎市に同協会が感銘を受け、現在もラグビーを通じて文化を共有し合っている。山戸さんは「(スコットランドの)協会の人たちが長崎にラグビーを広めようとしてくれて本当にありがたい」と話した。

9月中旬に来日するスコットランド代表の選手たちはペーロン(手こぎの船)に乗って子どもたちと交流する。平和公園と原爆資料館も訪れる予定。出迎えの準備も進んでいる。のぼりやポスターはもちろん、市内小中学校にラグビーコーナーを設け、給食でスコットランドの料理を食べる。イベントも計画中だ。「まだ認知度が低いので子どもからお年寄りまでもっと広めていきたい」と山戸さん自らスポンサー集めに県内を奔走する。

ワールドカップの1次リーグ最終戦(10月13日)では日本と対戦する。決勝トーナメント進出をかけた一戦になるかもしれない。市内ではパブリックビューイングを予定しており、山戸さんは「ほとんどの人が日本の応援になると思うけど、私たちは両チームを応援します」と話す。長崎市は複雑な思いを胸に、スコットランドの旗を振りながら両チームの突破を願っている。【松熊洋介】