2部リーグ全勝優勝の摂南大が、1年での1部復帰を果たした。

前半を24-10とリードしながら、後半に2連続トライを許し、残り10分までリードはわずか2点。勝負を決めたのは、フィジーから今春に留学生として来日したSOヴィリアミ・ツイドラキ(1年)だった。相手陣でボールを受けると、タックルをはね返し、インゴールまで走り抜けた。自らゴールも決めて31-22。後半ロスタイムに失点したが、2点差で逃げ切った。

同選手の父はトヨタ自動車で活躍し、日本代表WTBとして99年W杯にも出場したパティリアイ・ツイドラキさん(享年33)である。父は02年に急性心不全で他界。父と1文字違いの長男バティリアイ(23)は昨年、父を追うようにトヨタ自動車に加入した。そして、21歳になった次男ヴィリアミは、少し遅れて今年4月に摂南大の門をたたいた。

「オファーをくれた摂南大のためにも、ありがとうの気持ちでプレーしました。最後のトライは、パスをもらって、ディフェンスが来た。自分で行かないといけない。そう思いました。勝ちのトライ、最後のトライ、心から、うれしいです」

日本で生まれ、フィジーで育った。来日からまだ9カ月だが、日本語を習得。取材に応じるすぐ側には、はるばるフィジーから応援にかけつけた母と兄姉の姿があった。

「お父さんのために、日本代表になりたいです。お父さんの夢だけじゃないけど、自分のためだから、頑張りたいです。お父さんはとても足が速かった。サイズは小さかったけれどね」

ヴィリアミがラグビーを始めたのは、父が天国へ旅立ってからである。日本代表としてプレーした姿は、覚えていない。記憶にあるのは、幼少時代に育った愛知・豊田市内の公園で、父と楕円(だえん)形のボールをパスしながら遊んだこと。それでも「古い(ビデオ)テープを見ました」という。

かつて、平尾ジャパンの一員としてスタジアムを沸かせた父。99年W杯では開催国ウェールズからトライも奪っている。その背中を追う息子が、自らのトライで、摂南大を1部へ復帰させた。