全国高校ラグビー大会で茨城・茗渓学園高は自慢の走ってつなぐラグビーで平成最後の優勝を狙う。

「早く回せ」、「こっちだ」。ボールが見えなくなるほど暗くなったグラウンドで、選手たちの大きな声が響き渡る。普段の練習は午後4時から。昨年から照明が設置されたが、十分な明るさではなく暗くなればケガのリスクもある。それでも最終スクールバスの時間となる午後6時半ギリギリまでグランド内を走り回る。

中高一貫の進学校で、全国大会終了後もほとんどの生徒が大学入試を受ける。茗渓学園高のスタンスは普通の高校生。全国大会常連であっても特別扱いは一切ない。入部にあたり、スカウトは行わず、すべての部員が入試に合格して入部している。授業にラグビーが組み込まれており、楽しさを知って入部する生徒もいるという。中高一緒に練習をするため、中1から「茗渓ラグビー」を身近に感じながら、身に付けることができるのも強みだ。

強いFWで押していくラグビーではなく、パスを何度も回して、トライを取りに行くスタイルを基本とする。高橋健監督(54)は「一昨年までは45分ほどしかボールを使った練習ができなかった。あとは走るだけだった。ただそのおかげで、バックス陣は日本トップクラスになったと思う」と振り返る。

佐藤剛主将(3年)をはじめ、7人が昨年の花園を経験。昨年は2回戦で日本航空石川高に7-66で大敗した。桁違いのパワーを持つ外国人選手のタックルに衝撃を受けた。1年から出場している佐藤は「今年に入ってからディフェンスに力を入れた。FWで時間を使いすぎないように、早めに空いたスペースにいかにボールを送るかを練習してきた」と語る。高橋監督も「負けてから選手のウエートの意識が上がった。体はスリムだが今年のFWは力負けしない」と手応えを感じている。

昭和最後の68回大会決勝では昭和天皇崩御のため、決勝戦が行われず、大工大高(大阪、現常翔学園高)と両校優勝。茗渓学園伝統のパスラグビーを引き継いできた選手たちが、花園のグラウンドを駆け回り、平成最後の優勝も勝ち取る。【松熊洋介】