神戸製鋼が完全復活を遂げた。3季連続2冠を狙ったサントリーに55-5で大勝。トップリーグ(TL)は創設元年の03年度以来15季ぶり2度目の制覇、日本選手権の優勝は18大会ぶり10度目で最多優勝記録を更新した。

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復活には会社を挙げての覚悟があった。リーグ戦まっただ中の昨年10月8日、神戸製鋼所はアルミ製品などの検査データを書き換えていた問題を公表。次々と不正が発覚し、世間の信頼を裏切った。選手の数人は「大丈夫ですかね…」と漏らした。

チームの約4割は社員選手で、当時1年目のCTB重は「社員選手として『関係ない』じゃない。何ができるかを考えながら、ラグビーができることに感謝したい」と事の重大さをかみしめた。福本正幸チームディレクターは、当時の梅原尚人代表取締役副社長に呼び出され「ラグビー活動には支障をきたさない」と告げられた。選手は競技で結果を出すしかなかった。

この日の表彰式を終えたプロップ山下裕は「企業スポーツなので、会社の代表として戦う重圧があった。毎日、会社で『頑張れよ』って言ってくれていた人たちに報告できる」と胸をなで下ろした。過ちを受け止め、葛藤しながら、必死にたどり着いた日本一だった。【松本航】