「ダン・カーターの後輩」がついにベールを脱ぐ。ラグビーの神戸製鋼は17日、トップリーグ杯5位決定戦の東芝戦(19日、名古屋・パロマ瑞穂ラグビー場)に向けて神戸市内で練習。ルーキーCTB日下太平(19)が控えに名を連ね「短い時間かもしれないけれど、結果を残したい」とデビューの瞬間を待ちわびた。

神奈川県出身の19歳は、珍しいラグビー人生を歩んできた。高校はニュージーランドの「クライストチャーチボーイズ」。神戸製鋼を18大会ぶりとなる日本選手権優勝に導いた、元ニュージーランド代表の世界的SOダン・カーター(36)が卒業した名門校だ。

3歳から小6までは「鎌倉ラグビースクール」でプレーし、中高一貫の関東学院六浦中を卒業後に「最初は1年で帰ってくるつもりだった」とニュージーランドへ留学。「こんなに楽しいとは。3年間いたい」と訴えた結果、関東学院六浦高は日下の意志を尊重してくれた。

クライストチャーチボーイズ高ではCTBとして活躍。卒業を前にし、声がかかったのが神戸製鋼だった。大学進学も視野に入れていた中で、プロとなる決め手は「ウェイン(スミス総監督)とダン(カーター)が神戸に行くという話だった。このタイミングを逃す訳にはいかなかった」。現在の日本ラグビー界では異例といえる、高卒トップリーガーの道を選んだ。

レベルの高い周囲にもまれながら、大学の試合で1年生から活躍する同い年を見ては「俺も(神戸製鋼で)試合に出たい」と刺激を受けてきた。憧れのカーターとは「高校の後輩」だからこそできる会話もある。

「僕が高3の時にクライストチャーチですごく大事にされている、クライスト・カレッジとの対抗戦に負けてしまったんです。実は16年間負けていなくて、僕たちの前に負けたのが00年で、ダンの時。だから『やっと負けてくれたか。俺がやっと何も言われなくなる』とか、あとは『あの先生はまだいる』とか、そういう話をします(笑い)」

英語で直接会話できるからこそ、ラグビーにおける学びも多い。

「敵との間合いの詰め方を教えてもらうことが多いです。スターなのにプライベートでも謙虚な選手。『俺が俺が』という感じじゃないので、本当にかっこいい」

そんな日下の現在の目標は単純明快だ。「神戸製鋼で早くレギュラーを取りたい。今の大学1年生が卒業して入ってくる頃には、神戸を背負う選手になりたいです」。その第1歩がまもなく刻まれる。【松本航】

 

◆日下太平(くさか・たいへい)1999年(平11)11月8日、神奈川・鎌倉市生まれ。3歳から「鎌倉ラグビースクール」でラグビーを始め、関東学院六浦中、クライストチャーチボーイズ高を経て、18年春から神戸製鋼。17年度の高校日本代表。得意なプレーはパス。182センチ、95キロ。