ラグビーワールドカップ(W杯)8強進出を決めた日本代表の歴史的勝利の裏には、会場スタッフの「ONE TEAM」があった。

台風19号の影響で、13日夜のスコットランド戦(日産スタジアム)の実施が危ぶまれたが、スタッフらが急ピッチで準備を進めて開催にこぎつけた。

絶対に試合をやって決着をつける-。チームだけでなく、スタッフも同じ気持ちだった。会場を運営する新横浜公園管理事務所の高橋昌広氏(50)は「大会組織委員会などと連携し、台風直撃を想定しながら万全の準備を整えた。我々にとっても、10月13日は歴史的な1日になった」と振り返った。

管理スタッフや警備員、ビールの売り子ら総勢約2000人が会場復旧に向け、尽力した。交通機関の混乱などの影響で、人手不足により一部売店の閉鎖などもあったが、多くのスタッフが午前6時過ぎから仕事前に土砂の清掃や、大型スポンジを使って通路の雨水を吸うなどの作業をスムーズに行った。

会場周辺の多目的遊水地も一役買った。近くの鶴見川は過去にたびたび氾濫した「暴れ川」と呼ばれる。12日午後には水位が6・58メートル(通常0・8メートル)まで上がり、普段は陸上競技場などで使われるエリアが遊水地として機能した。鶴見川の流水を一時的にためて、洪水被害も防いだ。会場は1000本以上の柱に支えられた「高床式」で、1階駐車場は80センチの浸水があったが、迅速に管理スタッフが水吸引などの対応を施した。仮に駐車場が水没しても、開催できる体制も整えていた。2階の選手控室や3階のグラウンドの被害はなかった。

リーチ主将は試合後、「この試合を実現するために多くの方が努力してくれたことは分かっている。みんなに『ありがとう』」と感謝の言葉を伝えた。運営スタッフも含めた「ONE TEAM」で、勝ち取った勝利だった。【峯岸佑樹】

◆鶴見川多目的遊水地 2003年(平15)から供用開始。鶴見川が氾濫した際、一時的に河川の水を引き込み、流域への洪水被害を低減させる。遊水地には過去20回以上の浸水があったが、被害を最小限で抑えている。14年10月の台風18号では日産スタジアム1階の駐車場が1・9メートル浸水した。横浜市民には街を守る「安全装置」として知られている。