ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で史上初の8強入りを果たした日本代表のCTB中村亮土(28=サントリー)が11日、都内のクラブハウスで取材に応じ、社員選手としての誇りを語った。W杯初出場ながら全5試合に先発出場した中村は「楽しかったですね。ラグビー選手としては一番の大舞台で、目標を達成するまでの過程だったり、結果も出て、いい循環だった」と振り返った。

日本の大躍進を支えた中村は、日本代表選手のほとんどがトップリーグのクラブチームとプロ契約を結んでいる中、数少ない社員選手だ。仕事内容は営業職。酒販店を回り、サントリーの代名詞「ザ・プレミアム・モルツ」などを、酒販店が卸す飲食店に置いてもらえるように交渉している。営業のコツは「営業は人対人。コミュニケーション能力が大事。より近いと思ってもらえるようなきっかけを作ることがスタートだと思う。酒販店さんは各メーカーの担当者と話をするので、どこを優先するかがあると思う。優先順位でトップになることが一番のやるべきこと」と営業マンの顔をのぞかせた。

社員選手だからこそ、プロ選手にはない考えを持っている。「企業スポーツである以上、会社に支えられているという意味では、社員のみなさんに勇気と感動を与えないといけない。会社とプロスポーツのつなぎ役が社員選手だと思っています。サントリーの中でもより多くの方に知ってもらいたいし、サントリーっていう会社が素晴らしいよっていうのもラグビーを通して伝わる可能性もある。そこら辺は僕らがやるべきことかなと思っています」と語った。

しかしW杯イヤーの今年は、日本代表の活動が多く、ほとんど出社できていなかったという。それでも「僕の場合、上司に恵まれた。1年間出社できない状況の中、サポートしてくれている上司、チームを裏切りたくなかった」と上司や同僚の存在が、原動力の1つにもなっていた。「僕は変わらないと思います」と、今後も社員選手を続ける気持ちを持っている。

初の大舞台を楽しめたというが、体に異変が起こったことも明かした。大会期間中、後頭部に500円玉ほどの大きさの円形脱毛症に見舞われたという。「自分は全然言ってもらっても大丈夫だったんですけど、気づいていた幸太朗(FB松島)に後から『ガチすぎて言えなかった』って言われました。まだ全然生えてないんです。すっからかんです」と笑い話にして、報道陣を笑わせた。さらに寝付けずに睡眠薬をチームドクターからもらっていたといい「体は正直ですね。でも僕自身はプレッシャーはなかった。楽しかったです。体に感謝してます」と大会を最後まで戦い抜き、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

今は仕事もラグビーも休暇中。来月から職場復帰し、チームにも本格的に合流する。来年1月から始まるトップリーグに向けては「もちろん優勝しかない。個人的にはベストフィフティーンに入ること。サントリーというチームで『12番と言えば亮土だな』って認められる存在になれればいいです」と意気込んだ。