ラグビー日本代表候補のFW第1、2列16人が2日、東京・荒川区の武蔵川部屋に1日入門した。プロップ、フッカー、ロック陣の集中強化合宿の一環で、まわしをつけてしこ、すり足、ぶつかりげいこなど8種類のメニューに約1時間30分、汗を流した。FW、特に前5人の育成を急務とするカーワン・ヘッドコーチ(43)は「スクラムに使えるものがある」と選手同様、確かな手応え。今季初戦となる26日開幕のアジア5カ国対抗へ向けて貴重な体験となった。

 押しても押しても、ビクともしない。土俵際に追い詰めても余裕をもって体勢を入れ替えられ、スッテンコロリン。まわしをつけた日本代表候補は平均身長183・7センチ、同体重は108・4キロと重量級ぞろいだが、幕下以下相手の申し合いでは悪戦苦闘した。背中に汗が噴き出した昨秋のW杯日本代表ロック大野均(東芝)は「格が違う」と苦笑いするしかなかった。

 その一方で座敷で見守るカーワン・ヘッドコーチ(HC)はニヤリとしていた。「脇を締めて押す技術はスクラムに使えるし、立ち合いの速さはスクラムのヒットにつながる」と言う。今回の体験入門の発案者は、強化合宿に招聘(しょうへい)されたニュージーランド代表スクラムコーチのマイケル・クロノ氏。2年前来日した時に相撲部屋を訪問し、スクラムとの共通点を見いだしたという。

 選手同士の勝ち抜き戦で5人抜きを演じたロック谷口智昭はすり足効果を指摘した。「すり足は足の形がハの字で前に進む。スクラムで重い相手にはこの方が力を伝えることができそう」。低い姿勢、足の運び、背筋を伸ばす、下から押し上げる…。勉強になることはあったという。指導した大鳴戸親方(元幕内武雄山)はこんな見方もした。「カーワンは大きな相手にひるまないで向かっていく闘争心も身につけさせたかったのでは、と思う」。

 ラグビーと相撲の関係は深い。新日鉄釜石が日本選手権7連覇当時に相撲部屋を訪問、最近ではトヨタ自動車、慶大の例がある。11年W杯に向けてもFW前5人の強化は必要。日本の国技がその手助けとなるか。【三角和男】