<ラグビー・全国大学選手権:早大20-10帝京大>◇10日◇決勝◇国立

 早大が対抗戦覇者の帝京大に20-10で快勝し、2年連続大学日本一に輝いた。スクラムなどセットプレーで互角以上に渡り合い、NO8豊田将万主将(4年=東福岡)が豪快な突破で2トライ。守っても低く激しいタックルで1トライに抑え、対抗戦で敗れたリベンジを果たした。創部90周年のメモリアルイヤーに通算15度目の優勝。次は2月7日に開幕する日本選手権でトップリーグ勢に挑戦する。

 豊田主将は感極まった表情で、勝利の部歌「荒ぶる」を合唱した。早大は過去、対抗戦2敗を喫して大学日本一になったことはない。そのジンクスを自らのトライで吹き飛ばした。「夢のようです。僕なんかが主将をやってていいのかと思ったこともあるけど、みんなが背中を押してくれた」と目頭を熱くして、振り返った。

 189センチ、105キロの体が躍動した。3-3で迎えた前半最後のワンプレーだった。ゴール前で帝京大が反則。迷わずスクラムを選択し、右サイドを突いてインゴールに飛び込んだ。相手FWがシンビンで1人足りない状況とはいえ、持ち前の突破力は観客を沸かせた。後半23分には、ラックから4人のタックルをふりほどいてゴールポスト左へ。20-3。勝利を決定づけた。

 豊田主将にとっても苦しい1年だった。対抗戦で帝京大に連勝を53でストップされ、明大にも敗れた。「僕より中竹監督に厳しい目が向けられるのがつらかった」と言う。主将としての責任からか、本来の奔放なプレーが消え、窮屈になっていた。不安な日々が続いたが、早大元主将の佐々木隆道(サントリー)が声を掛けた。「僕なんか他力本願でやっていたよ」。この一言で何かがふっきれた。

 試合前のウオームアップ。控えの4年生がタックルバッグを持ち、タックルを受け止めてくれた。「試合に出られない4年生が僕らに託してくれていると思うと、涙が止まらなかった」と言う。涙の意味は他の選手にも伝わった。対抗戦では圧倒された帝京大のスクラムと互角の勝負。4年生プロップの山下は「相手のFWは重く強かった。うちは個々で押してしまうきらいがあったけど、8人がパックになって立ち向かった」と話した。

 「今回の優勝は昨季より2倍苦しんだ分、2倍うれしい。FW戦は自信があったし、魂を込めたラグビーができた」と笑顔の中竹監督が、豊田主将に求めていたのはこれまでの模範的なリーダー像ではなかった。「主将らしくするな。暴言を吐いてもいい。暴れまくれ」とまで言った。例年にない危機感、緊張感の中で迎えた大学選手権決勝。頂点に導いたのは主将の復活だった。【三角和男】