<ラグビー・日本選手権:三洋電機24-16サントリー>◇2月28日◇決勝◇東京・秩父宮ラグビー場

 三洋電機がサントリーに24-16で逆転勝ちし、2年連続2度目の日本一に輝いた。3-9とリードを許して折り返した後半、途中出場のFB吉田尚史(33)らが3トライを挙げて突き放した。リザーブも含めた22人が自分の役割を果たす全員ラグビーで頂点を勝ち取った。7年ぶりの優勝を狙ったサントリーは終盤の1トライに抑えられ、三洋電機に昨季の日本選手権決勝から4連敗を喫した。

 三洋電機は後半14分にリザーブのSOブラウン、フランカー川口、フッカー堀江の3人を投入した。これが逆襲の合図だった。「チームに攻守でスピードを与えたかった」と言う元ニュージーランド代表ブラウンが加わり、試合が一気に動いた。19分に吉田、25、33分にトップリーグのトライ王WTB北川が立て続けにトライ。残り20分で勝負を決めるプラン通りの快勝だった。

 前半はサントリーに押され気味で、何度かゴールラインを背にした。しかし、激しい防御でしのいだ。飯島監督は「我慢していれば勝機は訪れる」と意を強く持っていた。フィットネスには絶対の自信があった。春先は小さな山を登る15キロの走り込みなどを定期的に行った。陸上部のようにただ、ひたすら走る。それがこの日、生きた。ボールをワイドに振るラグビーを展開した後半。サントリーの足が止まった。

 CTB榎本主将は「去年の優勝より何倍もうれしい。ケガ人が多く苦しい時期もあったが、全員で乗り切った」と言う。大黒柱のブラウンが昨年10月25日、試合中に受けたタックルが原因で膵臓を損傷して離脱。復帰したのは今年2月8日のプレーオフ決勝戦だった。WTB三宅は「ブラウンがいなくなり、個々が自立しないといけない必要性に迫られた。その危機感で親離れができた」と話した。

 全国社会人大会決勝に9度も進出しながら1分け8敗と悲運がつきまとったかつてのイメージはもうない。今季トップリーグのプレーオフ決勝で敗れた東芝は選手の不祥事で出場辞退したが、9年ぶりに監督に復帰した飯島監督は「東芝へのリベンジは来季トップリーグ開幕戦で対戦するので切り替えた。私は勝ったことのない人生を送ってきたので、すごくうれしい。成長した選手を誇りに思う」。榎本主将は日本一を駅伝に例えて、こう言った。「みんなで1つ1つ、タスキをつないでようやくゴールできた」。【三角和男】