<ラグビー:全国大学選手権>◇20日◇1回戦◇東京・秩父宮ほか

 昨季準優勝の帝京大が粘りで関東学院大を退け、史上2校目の3連覇を狙う早大への挑戦権を手にした。5点を追う後半ロスタイムにWTB伊藤拓巳(2年)がゴール右隅に飛び込み同点トライ(ゴール失敗)。17-17で引き分けも、トライ数で上回って準々決勝に進出した。これまで5戦5敗だった相手にてこずりながらも、5日の慶大戦に続いて試合終了間際に「勝負」をひっくり返した。27日の早大戦で、昨季決勝で敗れた借りを返しにいく。慶大、明大、東海大らも8強入りした。

 殊勲の同点トライは、すぐには認められなかった。12-17で迎えた後半ロスタイム、伊藤が相手2人に押し出されるように、コーナーフラッグを倒しながら、ゴール右隅に飛び込んだ。副審は、伊藤がラインの外に出たことを意味する旗を上げた。ボールを地面につけたのが先ならトライは認められ、同点ながら帝京大の8強入り。足が外に出たのが先ならば、そのまま関東学院大の勝利だ。

 主審が副審に確認している約1分間、会場にざわめきが続き、両軍とも複雑な表情だ。そんな中、伊藤は「絶対にトライだと思っていた。足が外に出るより先に、手から降りた意識があった」と自信があった。そして、正式にトライのコール。「部員130人の思いを感じた。自分がトライしたというより、みんなにトライさせてもらった感じ」と、土壇場での執念が実ったプレーを振り返った。

 帝京大は5日の慶大戦でも、後半39分に逆転トライを決めて勝利、慶大の優勝を阻止した。伊藤は「最後まで粘れるようになった」と誇らしげだ。しかも関東学院大には大学選手権6度目の対戦で初めて「勝利」した意味は大きい。

 野口主将は「次は関東学院大の分も」と敗者を思いやる。関東学院大も昨年度大会1回戦で早大に敗れ、雪辱を狙っていた。この日の対戦は、早大への挑戦権をかけた戦いでもあった。さあ、昨年度決勝で負けたリベンジへ-。この日、途中からSOに入った徳永は「相手がワセダでも、自分たちの力を100%出せれば大丈夫」と力強い。自慢の強力FWに、粘り強さを加えた帝京大は自信に満ちていた。【岡田美奈】