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谷涙の「金」ママでも強かった/世界柔道

- 女子48キロ級で優勝を決め、声援にガッツポーズで応える谷亮子(共同)
<柔道:世界選手権>◇最終日◇16日◇女子48キロ級◇ブラジル・リオデジャネイロ
【リオデジャネイロ=菅家大輔】YAWARAはママになっても強かった。女子48キロ級の谷亮子(32=トヨタ自動車)が、涙の復活を果たした。決勝で前回王者ヤネト・ベルモイ(キューバ)に優勢勝ち。アテネ五輪以来3年ぶりの国際大会で、男女通じて大会最多の2大会ぶり7度目の優勝を成し遂げた。05年12月に長男佳亮ちゃん(1)出産後、長期ブランク、復帰戦での敗北、育児との両立と、数々の苦難を乗り越えて再び世界の頂点に立った。3連覇を狙う北京五輪での「ママでも金」も現実味を帯びてきた。
込み上げる感情を抑えきれなかった。7度目の金メダルを告げるブザーが鳴ると、谷は両拳を握り締め小さくガッツポーズした。「過去の6度よりも、いい試合ができた感触がある。結婚して、出産してからも王者になれてうれしい」。目には涙が光っていた。
決勝では20歳の前回王者ベルモイを寄せ付けなかった。相手がもろ手刈りを狙っていることを察知すると、すぐに接近戦に転じた。組み手争いでもペースを握った。焦って懐に飛び込んできた相手を払い腰で跳ね上げ、試合を決める有効を奪った。キャリアの差を見せつけた。
「死のロード」と呼ばれた激戦区を、経験を生かした試合運びで勝ち抜いた。初戦の2回戦こそ29秒で1本勝ちしたが、強豪との対決が続く3回戦以降は無理をせずに、有効にポイントを奪う戦略に変更。アテネ五輪銀メダルのジョシネ、06年世界ジュニア王者の呉、欧州女王ドゥミトル-。決勝のベルモイを含めて、現在のこのクラスの世界トップ選手を一網打尽にした。「思ったより力負けしなかった。スタミナも大丈夫だった」。2度の延長にも、集中力は切れなかった。
05年12月に長男を出産。妊娠、育児期間を含めて2年近くブランクをつくった。今年4月の全日本選抜体重別選手権で復活したが、決勝で福見(筑波大)に敗れ準優勝。「アスリートの体になっていなかった」(谷)。実績を買われて世界選手権の代表に選出されたが、選考には批判の声も出た。初めて逆風が吹いた。
一方で全柔連の吉村強化委員長は復活を確信していたという。「亮子は02年の全日本選抜体重別で福見に負けてオレの前で号泣した。その時は自分への情けなさから、引退も示唆した。それが今回は涙も見せず前を向いた。この苦境をモチベーションに変えられると思った」と振り返る。
代表決定後も子育てとの両立にも苦闘した。5月中旬には離乳を急いだことで乳腺炎を発症。10日間ほどの休養を余儀なくされた。6月上旬の白浜合宿までは、宿舎の近くのホテルに母和代さんと佳亮ちゃんを宿泊させて、授乳などのために練習場と宿舎とホテルを往復した。睡眠時間は3時間しか取れなかったが、夫の巨人谷外野手に「柔道を再開しても子育てと家事の手を抜かない」と約束していた。妥協はしなかった。
父勝美さんは「離乳する、しないなどを報道されるたびに多方面から様々な反応があった。批判もあった」と明かす。しかし、谷は逆境を見事にプラスに転化してみせた。「出産して逆に体力がついた。今日も延長戦の連戦をしたけど息が上がらなかった。数年前なら上がっていた」。
00年シドニー五輪で五輪初制覇を遂げた同じ9月16日に、大会史上最多7度目の優勝を達成。97年から続く五輪と世界選手権の世界大会連勝記録を34まで伸ばした。一夜明けた17日、谷は落ち着いた口調で言った。「しばらく休養して、しっかり充電したい。復帰は来年からになるかも。五輪の3連覇ははっきり見えてきた」。北京五輪の目標「ママでも金」を、しっかりと視界にとらえていた。
[2007年9月18日9時13分 紙面から]
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