<2000年3月22日付日刊スポーツ紙面から><柔道:全国高校選手権>◇21日◇女子7階級3回戦~決勝◇東京・講道館

 高校女子柔道界にニューヒロインが誕生した。シドニー五輪代表が有力視される上野雅恵の妹、順恵(よしえ、1年=旭川南)が63キロ級を制した。幼少時代から姉妹で鍛え合った実力がついに開花。高校時は準Vだった姉を超え、将来の五輪出場を目標に掲げた。全日本選抜体重別(4月9日)では、五輪代表候補の木本奈美と初戦でぶつかる。

 【女子】

 ▽48キロ級決勝

 

 松田(福岡・沖学園)優勢

 宝(宮崎・宮崎日大)

 ▽52キロ級決勝

 

 佐藤(北海道・旭川南)優勢

 久保(千葉・市柏)

 ▽57キロ級決勝

 

 岩田(東京・淑徳)優勢

 河原(茨城・土浦日大)

 ▽63キロ級決勝

 

 上野(北海道・旭川南)優勢

 藤本(宮崎・宮崎商)

 ▽70キロ級決勝

 

 中川(京都・立命館宇治)内また

 2分55秒

 七条(福岡・福岡工大付)

 ▽78キロ級決勝

 

 中沢(東京・淑徳)体落とし

 2分22秒

 原沢(群馬・利根商)

 ▽78キロ超級決勝

 

 上田(兵庫・夙川学院)優勢

 駒木(神奈川・東海大相模)

 「判定!」の声とともに、旗が上がる。白が2本、赤が1本。際どい勝負を上野がものにした。4回戦から3試合はすべて判定優勢勝ち。白いゴムで前髪をまとめ、あらわになった額からポタポタと汗が流れた。中学で2位どまりだった全国大会で、ついに頂点に立った。「やっぱ、うれしいです」。短い言葉に、実感がこもった。

 シドニー五輪女子70キロ級最有力候補の姉雅恵でも成し遂げられなかった高校V。観戦に訪れた雅恵は「1年生で優勝できるのは相当力があるということ。(私とは)全然違いますよ」と感心した。スタンドで見守った父法美さんは「気持ちが表に出るタイプ。柔道の成績は、順恵の方がダントツにいい」と自慢の娘を見つめた。

 物心がついたときには、柔道着を着ていた。小1から本格的に取り組み始めた。5つ年上の姉を相手に上達した。気付くと、黒帯に刺しゅうされた名前の「上」の字がすり切れてなくなっていた。今大会前も姉が所属する住友海上で2日間汗を流した。「自分の持ち味を出して頑張れ」と励まされて臨み、期待にこたえてみせた。

 「将来は五輪に出てみたいです」と目標は高い。2004年アテネ五輪では、姉妹そろって出場する可能性もある。腕試しとなる4月の全日本選抜体重別で、五輪代表候補の木本奈美といきなり対戦する。「遠い存在。絶対に勝てない」という姉に近づくため、日本のトップクラスに挑戦する。【佐々木一郎】

 ◆上野順恵(うえの・よしえ)

 1983年(昭58)7月1日、北海道・湧別町生まれ。小1から柔道を始め、中3で全国中学校大会56キロ級2位。高校から63キロ級に転向。得意科目は数学。163センチ。家族は父法美さん(46)母和香子さん(44)姉雅恵(21)妹巴恵さん(小4)。