日本相撲協会広報部によると、「八百長」をめぐって実際の法廷で争われた前例はない。だが明治時代の新聞にも疑惑を報じられるなど、昔から何度も取りざたされてきた。そもそも明治初期に八百屋の長兵衛が相撲の親方と碁を打つ際、親方の機嫌を取るためにわざと負けてごちそうになっていたことが八百長の語源とされているほどだ。

 1963年に石原慎太郎・現東京都知事がスポーツ紙上で、秋場所の柏戸と大鵬の横綱全勝対決が八百長だと言明。これに対し、相撲協会は名誉棄損で東京地検に告訴した。両横綱は東京地検特捜部から参考人として事情聴取を受け、八百長を否定。その後、相撲協会は告訴を取り下げた。

 96年には元大鳴戸親方(元関脇高鉄山)が週刊誌上で疑惑を暴露。相撲協会は同親方が亡くなった後、名誉棄損で週刊誌側を東京地検に刑事告訴したが、嫌疑不十分で不起訴処分になった。

 2000年には、元大鳴戸親方の弟子だった元小結の板井圭介氏が週刊誌上で告発し、日本外国特派員協会での講演会でも八百長は存在すると発言。また先月29日には、大麻問題で日本相撲協会を解雇された元幕内若ノ鵬が「アンフェアな取組を強いられた」と証言するなど、八百長騒動は後を絶たない。

 八百長の存在を一貫して否定している相撲協会だが、一方で「故意による無気力相撲」に対しては除名、出場停止などの懲罰規定を設けている。