<大相撲名古屋場所>◇4日目◇13日◇愛知県体育館

 5月の技量審査場所千秋楽から約1週間後、大関魁皇(38=友綱)は苦笑いでこう漏らした。「歩くのもやっとだよ。右腕もここまでしか上がらないし」。右ひじは肩の位置までも上がらなかった。満身創痍(そうい)で大記録に到達した偉業は、けがに打ち勝った歴史でもある。

 慢性的な痛みを抱える腰や脚、腕。全身に故障歴が刻まれるが、執念で克服してきた。ある後援会関係者は「けがが治るという話を聞くと、奥さんと一緒にいろんなところに行っている」と話す。元プロレスラーの充子夫人の理解もあり、故障と向き合った。

 昨年はこんなこともあった。親交のある東関親方(元幕内潮丸)が健康づくりのためにウオーキングをしていることを耳にすると、一緒に行きたいと希望した。暑い時期だったというが、墨田区の自宅から江東区まで赴き、1時間余り歩いて戻ってきた。東関親方は「まさか、大関が本当に来るとは思わなかった」と積極的な姿勢に驚く。

 酒豪だが体を第一に考え、近年は深酒を控えているという。「付き合いが悪くなったってよく言われる。でも仕方ない」と話した。1988年春場所の初土俵以来、休場は19度を数える。同じ38歳で、角界デビューも一緒だった貴乃花親方(元横綱)は「相撲は現役生活が短い。前代未聞の力士じゃないですか」と最大級の賛辞を贈った。