<大相撲名古屋場所>◇5日目◇14日◇愛知県体育館

 魁皇(38=友綱)が積み上げた史上最多の1046個の白星には、1990年代から現在に至るまでの大相撲が凝縮されている。

 前人未到の幕内在位100場所で迎えた昨年3月の春場所。朝稽古を終えた魁皇は、しみじみとつぶやいた。「相撲道の王道を歩んだ正統派の貴乃花、桁違いのパワーだった曙や武蔵丸のハワイ勢はもちろん、変則的なスタイルのモンゴル人やレスリングのような相撲を取るヨーロッパ系の力士…。おれはいろんなタイプの力士と対戦させてもらったよなあ」

 全盛期だった20代のころは、同期生の若貴兄弟や曙らとしのぎを削った魁皇。数年前からは力が衰えながらも、朝青龍や白鵬のモンゴル出身横綱、長身の琴欧洲や把瑠都といった大型の欧州勢にも懸命に立ち向かった。

 「実際に肌を合わせた者にしか分からないことがある。おれの経験は引退して指導者になってから生きると思うんだ。それを後輩たちに伝えたい」と力強く言い切ってから1年余り。野球賭博事件や八百長問題と、大相撲史を揺るがす二大騒動では、当事者ではないが心を痛めた。角界の生き字引のような存在となった魁皇。その土俵人生が大きな記録で彩られた。