大相撲の秋巡業は25日、広島市で行われ、大関稀勢の里(28=田子ノ浦)が思わず苦笑いした。

 この日は土俵の砂の状態が悪かったこともあり、会場の端で基礎運動を行っていた。周囲には大関見たさに、ファンが次々と集まった。

 黙々と、すり足や体幹トレーニングを繰り返す大関に観客は、入れ替わり、立ち替わりとなった。だが、その中で1人のファンはずっと、サイン欲しさに待っていた。「30分くらいいたんだよね。だから…」。

 稽古中は集中し、ファンと触れ合うことをしない稀勢の里。だが、思わず心を打たれて、求めに応じてサインをしてあげた。それが始まりだった。「すぐに人が集まっちゃった」。いつの間にか、長蛇の列ができていた。あとはもう、応え続けるしかなかった。

 「遠藤の気持ちが分かりましたよ。久々に、人気者になった気分」。笑いながら、最後の巡業地となる山口・防府市へと旅立った。