<大相撲春場所>◇12日目◇20日◇大阪府立体育会館

 雲の上の存在をついに破った。しかも十八番のがぶり寄りでの悲願達成だ。土俵際まで追い込んだ瞬間、命綱の右上手が離れたが、かまわず寄った。

 琴奨菊

 もう、真っ白でした。いつも横綱に上手を取られて負けているので、先に上手を取って前へ攻めることだけを考えていました。最後にまわしから手が離れたけど、もう倒れこんでもここで決めるしかないと思って。やっと勝てました。よかった~。うれしいです。ずっとすごい人だと思ってきたんで。

 普段から勝った喜びを素直に表現する男が、文字通りのニコニコ顔で座布団が舞う館内を見上げた。

 白鵬には昨年九州場所初日で勝利しているが、朝青龍には先場所まで7戦全敗と歯が立たなかった。朝青龍が97年にモンゴルから来日して明徳義塾高相撲部に入部した際、同中の2年生。当時から「お前は強くなるよ」と目をかけられていたが、その強烈な負けん気に圧倒されていた。幕内で対戦するようになっても、土俵下からにらむ先輩の視線を外し、うつむき続けてきた。だからこそ、自分の相撲で勝てたことが何よりうれしい。

 この白星で琴欧洲、琴光喜の不振で暗かった佐渡ケ嶽部屋に光を差した。「両大関の陰で目立たなかったんで、余計に今場所は自分が頑張ろうと思っていました。これで少しは目立てたかな」。安馬、稀勢の里と並ぶ次期大関候補は、残り3日も白星を重ね、関脇の座を守りにいく。【柳田通斉】