<大相撲春場所>◇千秋楽◇23日◇大阪府立体育会館
横綱朝青龍(27=高砂)が4場所ぶりに「最強」の座に復活した。2場所連続の横綱白鵬(23=宮城野)との千秋楽相星決戦を小手投げで制した。時間にしてわずか3秒7の速攻で、貴乃花に並ぶ歴代4位の22度目の優勝に目に涙を浮かべた。土俵下での優勝インタビューでは「まいど、おおきに!」と喜びの雄たけび。昨年の2場所出場停止から復帰後初の賜杯で、ライバルとの世代交代にも待ったをかけた。
赤くなった目に涙があふれていた。支度部屋に戻った朝青龍は、何度も目頭をタオルでぬぐった。「やっぱり違いますよ。去年1年間のいろいろなことを思い出すと…」。声が震えているようだった。2場所出場停止を乗り越えてつかんだ4場所ぶりの賜杯。これまでの21回とはまるで違う重みがあった。
白鵬との相星決戦は、あっけなく決まった。立ち合いから一気に土俵際へ押し込まれた。その瞬間、右小手投げをうった。ライバルは、一回転して土俵下へとんだ。時間にして3・7秒。朝青龍らしい豪快な速攻相撲だった。思わず左手でガッツポーズをしていた。
朝青龍
立ち合いにだけ気をつけた。思い切ってやるしかなかった。負けた悔しさを晴らさないといけない。場所前から、ずっとそう思ってやってきました。
優勝回数以上に大きな意味をもつ勝利だった。復活場所となった初場所の千秋楽相星決戦で、白鵬に力負け。優勝を逃した。一方、4歳年下の白鵬は3連覇を達成。今場所再び敗れれば「最強横綱」の座は、完全にライバル横綱に移る。世代交代に待ったをかける意味でも、絶対に負けるわけにはいかなかった。
自信があった力相撲で負けたことが悔しかった。自分だってまだ成長できる。そう信じて筋力トレーニングに力を入れた。通常のけいことは別に、週3回、ジムに通った。ベンチプレスでは自己最高の200キロを上げた。場所前には関係者に二の腕を見せつけ「太くなっただろ」と自慢した。再び自信をつけて春場所を迎えた。
これまで大一番の前にはイライラすることが多かった。だが、この日の支度部屋では別人だった。付け人と談笑するなど、終始リラックスしていた。大銀杏(おおいちょう)を結う床山の床寿は「態度はでかいけど、気が弱いところもある。先場所の千秋楽も緊張していた。今日もそうかと思っら、ケロッとしていた」と驚いた。
発奮材料もあった。高知・明徳義塾高時代にお世話になった浜村敏之相撲部監督の佳子夫人が昨年から体調を崩し、静養していた。8日夜に高砂部屋を訪れた同監督は「『お前の優勝が何よりの薬だよ』と声をかけたら、うなずいていたよ」と明かす。「日本の母」のためにも、もう1度優勝する姿を見せたかった。
支度部屋に引き揚げる花道では観客の拍手にVサインで応えた。勝利インタビューでは「ワシは大阪好きやで!
ホンマに好きやで!
まいど!
おおきに!」と大阪弁で叫んだ。「品格」を指摘された以前のやんちゃな横綱が、再び土俵の真ん中に戻ってきた。【来田岳彦】

