<大相撲夏場所>◇4日目◇14日◇東京・両国国技館
小結稀勢の里(21=鳴戸)が天敵を突破し、大関への足掛かりとなる2ケタ勝利へ加速した。3連敗中だった関脇安馬(24)に押し込まれたが、土俵際の突き落としで逆転勝ち。今場所初日に横綱朝青龍を破るなど、横綱、大関陣と互角の勝負をしながら、同世代のライバル安馬、琴奨菊に阻まれて、大勝ちできず、小結止まりだった。苦手を1人突破したことが大きな自信になった。横綱白鵬(23)ら3人が全勝をキープした。
いい出足で前へ出る安馬に、稀勢の里はあっという間に土俵際に詰まった。俵に足をかけながらも、必死に左へと回った。その時、スローモーションのように安馬が土俵を飛び出す姿が目に入った。「相手の相撲だったが、何とか勝てた。いい相撲でも負けは負け。(この1勝は)大きいですよ」。普段は勝っても反省点を口にする男が自画自賛するほど、うれしい白星だった。
横綱、大関を何度も倒しながら、安馬には先場所まで3連敗。同じく関脇の琴奨菊に5連敗と、ともに同世代ライバルに勝てなかった。それが、大関昇進の基準となる「3場所3役で合計33勝」に手が届かない原因だった。
師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)は「安馬にはムキになってしまう。優勝できる人のように『15日間の1つ』という感覚になれないんだ」と分析する。2人からライバルとして名指しされることで意識過剰になり、普段の相撲が取れないことが敗因だった。「相手の弱点を攻めればいい。安馬がムキになって出てくれば、突き落としもありますよ」。取組前の師匠の予言が見事に的中。もちろん弟子へも伝えられていたはずだ。
北の湖理事長(元横綱)も「今日は内容より勝てたことが大きい。自分より番付の上の人間に勝つことで、引きずり降ろすことができるんだ。要所の一番で勝ったことで乗ってくる」と期待を寄せる。
春場所千秋楽で、勝てば関脇昇進という琴奨菊戦に敗れた悔しさを忘れていない。「小結で久しぶりに勝ち越したのに、そんな気分は吹き飛んだ。相手の星は考えず、自分で奪い取るしかない」と春場所後はすぐにけいこに打ち込んだ。精神的にもひと皮むけた若武者が「2ケタ勝って新関脇、そして大関への足掛かりをつくる」という目標へ大きく前進した。【来田岳彦】

