<大相撲夏場所>◇10日目◇20日◇東京・両国国技館
横綱白鵬(23=宮城野)が、またしても天敵に土をつけられた。昨年秋場所から3連敗した関脇安馬(24)相手に攻め急いで墓穴を掘り、投げの打ち合いの末に敗れて初黒星。土俵下に落ちた際には左足首をひねり、付け人の肩を借りて引き揚げるなど、終盤戦に不安を残す1敗となった。全勝を守った大関琴欧洲(25)が単独トップに立ち、白鵬と横綱朝青龍(27)が1敗で追う展開となった。
痛々しい姿だった。大またで闊歩(かっぽ)した前日までとは違い、白鵬は付け人の肩に右手を置き、左足を引きずりながら帰りの車に乗り込んだ。「ひねった」とつぶやき、「痛い?」の問いかけに「そうですね」。下をうつむき、発する言葉には、力がなかった。
低く踏み込むこれまでの姿はなく、腰高に立った。右四つに組みながら投げを打つなど、攻め急いだ。「(やりにくさは)あるよね…」。動き回ろうとする安馬のペースに合わせていくのは、3連敗した時と同じ。最後は強引な投げも通じず、逆に土俵下にいた朝青龍の目の前まで投げ捨てられた。首をひねり、ぼうぜんとしたが、あとの祭り。「勝ったと思ったが甘かった」と反省する白鵬に、北の湖理事長(元横綱)は「胸を合わせた時に止まって良かったのに、早くつかまえたい意識が強くあったのだろう」と首をひねった。
3日目の夜。横浜市にある興禅寺の市川智彬住職(67)と会食した。06年には座禅を経験し、精神面のアドバイスを受ける住職に「小さくて速い者に慌てることがある」と打ち明けた。「焦りが墓穴を掘ることがある。横綱はバタバタしないで、威風堂々とすればいい」。金言を与えられた直後だったが、落とし穴があった。
病院には行かず、部屋に戻ると自力で歩いた。横綱昇進後、初日からは9連勝が最長。琴光喜に敗れた昨年名古屋場所、安馬に投げられた初場所と、またしても10日目の壁に阻まれた。吉兆を探すとすれば、安馬に敗れた過去3場所で優勝していることか。「3回とも優勝してますからね」の問いに、苦笑いを浮かべるしかなかった白鵬。横綱になってから1年。真価の問われる終盤戦に、泣き言など言っていられない。【近間康隆】

