琴欧洲全勝Vへ朝青龍倒す/夏場所
<大相撲夏場所>◇11日目◇21日◇東京・両国国技館
大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)が、横綱朝青龍(27)を寄り切って全勝をキープ、初優勝へ前進した。これまでは大一番で緊張して力を発揮できなかったが、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の“アイコンタクト”の激励も受けて難敵を退けた。12日目に、もう1人の強敵で1敗の横綱白鵬(23)を突破すれば、かど番優勝へ大きく前進する。
琴欧洲は朝青龍を上回る踏み込みで、体をぶつけた。狙い通り右上手を取り、出し投げで揺さぶって、左前まわしも引くと、一気に出る。渾身(こんしん)の力で相手を寄り切った瞬間、ふーっと息を吐き出すと、心からの笑みを浮かべた。「左前まわしを取って、勝負しかないと思って出ました。余計なことを考えずに、思い切り当たれたのがよかった」と会心の相撲を振り返った。
前日、白鵬が敗れて単独トップに立った瞬間から、重圧でガチガチだった。花道で出番を待つ間も不安は増した。しかも相手は3年前、初優勝の前に立ちはだかった朝青龍。嫌な思い出が頭をよぎった。だが、顔を上げると反対側の通路に、場内警備中の師匠が「緊張するな」と言わんばかりに肩を上下させている姿が見えた。土俵上でも師匠の姿を思い出しながら、体を揺すって緊張をほぐした。
師弟の信頼がもたらした復活だ。春場所途中休場で2度目のかど番が決まったとき、師匠に声をかけられた。「今はつらい時期だろうが、これ以上、つらい思いをしたくないだろ」。その言葉に増量と強靱(きょうじん)な下半身をつくる肉体改造を決意した。食事量を増やし、チーズ丼など高カロリーの食事を心がけ、5キロ増量した。小さな相手とぶつかりげいこを行い、頭を下げず、ひざで高さを調整するよう、立ち合いを修正した。
北の湖理事長(元横綱)は「ウソみたいに変わった。これまで考えすぎて固くなっていたが、立ち合いに迷いが感じられない。明日(の白鵬戦に)勝てば大きく優勝に近づく」と太鼓判を押した。
昨年夏場所14日目、白鵬優勝決定後の“消化試合”で朝青龍を破った後、花道のテレビモニターで勝利を確認してガッツポーズをして喜んだ。だが、この日は「横綱戦も1番は1番。勝てば全部うれしいです」と淡々と話した。まだまだ喜んではいられない。「明日は明日、何も考えずに行く」。無心で横綱連破を果たし、悲願の初優勝を引き寄せる。【来田岳彦】
[2008年5月22日8時35分 紙面から]
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