<大相撲夏場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 初優勝を飾った大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)が来場所、厳しい条件で綱取りに挑むことになった。この日は大関千代大海(32)を寄り切り、14勝に到達。名古屋場所(7月13日初日、愛知県体育館)に横綱昇進がかかるが、今場所がかど番だったことなどを問題視され、最低ノルマが「14勝以上」に引き上げられた。さらにこの日の結びの一番で朝青龍(27)白鵬(23)の両横綱が見せた「失態」の影響から、品格面のハードルも高くなりそうだ。

 踏み込んで当たった琴欧洲は、左上手と右下手をがっちりと引いた。あとはそのまま前に出るだけ。力強い白星で初優勝場所を締めた。「優勝は1日たっても信じられない。初めての14勝です。今日の白星は大きかった」。朝げいこで師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から「今日の一番でどういう相撲を取るかが評価されるんだぞ」と言葉を掛けられ、満点の答えを返した。

 来場所には綱取りがかかる。「今場所みたいに1日1日、自分の相撲を取り切るだけ」と本人は慎重に話した。佐渡ケ嶽親方は「ここで終わりじゃない。上を狙うなら、継続してやっていかないと」と手綱を引き締めた。

 師弟の挑戦には厳しい条件が立ちはだかる。今場所がかど番だった上、琴欧洲は大関在位15場所で2ケタ勝利が4度しかない。これまで北の湖理事長(元横綱)は「2場所連続で13勝以上」を昇進の目安にしていたが、この日は「今場所と同じか、それ以上の相撲を取ることが大事」と、14勝以上を条件づけた。横綱審議委員会の海老沢勝二委員長からは「これまでの印象が悪いから、それをどう消化するか。両横綱を倒すか、少なくとも1人を倒すことが必要」というノルマも加わった。

 成績面だけではない。千秋楽の結びの一番で、朝青龍、白鵬の両横綱が、けんか腰のにらみ合いを演じたことで、品格面のハードルもさらに高くなる。テレビ出演や祝勝会、米ロサンゼルス巡業など人目に触れる機会が増える中、横綱にふさわしい行動を見せ続けることも必要だ。

 琴欧洲の横綱昇進は昨年8月に死去した先代の師匠(元横綱琴桜)の夢だった。佐渡ケ嶽親方は「先代は『こいつが綱を締めたら似合うだろうな』と言っていた。そういう力士になってほしい」と話す。その期待に応えるには、与えられた条件を全力でクリアしていくしかない。【来田岳彦】