<大相撲名古屋場所>◇5日目◇17日◇愛知県体育館
粘って、粘って、横綱を撃破した。栃乃洋は朝青龍の速攻に必死でついていった。差し込んだ命綱の左を最後まで離さない。頭をつけられ、内無双を受けて足が流れても、執念で体を相手に浴びせて前に出た。物言いはついたが、軍配は覆らなかった。「もうダメかと思った。うまく体を預けられた。取り直しで2番は無理だと思った」と力を出し切った。貴乃花審判部副部長(元横綱)も「ベテランの持ち味が十分に出ていた」とたたえた。
04年秋場所に同じ朝青龍を破って以来、約4年ぶりの金星。通算12個は高見山(現東関親方)に並ぶ、史上2位タイだ。「待ちに待った金星。何年ぶりか分からない。5年ぶりかな?
まだ、武蔵丸関がいたよね」。実は、横綱武蔵丸(現親方)は03年九州場所にすでに引退。久々に味わう興奮に、記憶も飛んでしまっていた。
96年初場所に幕下付け出しで初土俵を踏んで以来、約12年半。歴戦で両ひじなど古傷も抱えている。それでも毎日、けいこ場に立ち、若手と同じけいこを続ける。弟弟子の栃煌山が先の夏場所で8連敗を喫した際には、居残りで立ち合いの修正を指導。今場所前に20歳の栃ノ心が指導にふてくされた態度をとった際も、親方より先に厳しくしかりつけた。
師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)も「関取衆のまとめ役。鬼軍曹だよ。『若手と同じけいこをすれば力士寿命が延びる』と声をかけるけど、その前に自分からやるんだよな」と感心した。大関琴光喜の全勝止めた前日に続く殊勲で、白星先行。相撲に、後進指導に情熱を注ぐ34歳が、今場所の台風の目になるかもしれない。【来田岳彦】

