クロなら場所を中止に--。2日に浮上した平幕露鵬(28=大嶽)十両白露山(26=北の湖)の大麻使用疑惑を受け、貴乃花親方(36=元横綱)が3日、緊急提言した。2人の無実を祈る一方で、使用が明白になった場合は、秋場所(14日初日、両国国技館)中止を視野に入れるべきとの考えを示した。2人の受けた大麻使用精密検査の結果は早くて5日、遅くとも6日までに判明する。日本相撲協会役員待遇でもある同親方の提言は、角界が迎えた重大局面に大きな影響を与えそうだ。

 大相撲の窮地に、声を上げずにはいられなかった。貴乃花親方はこの日、都内で行われた日本サッカー協会新役員披露パーティーに出席。露鵬、白露山の大麻使用疑惑を受け、報道陣から「秋場所を中止、もしくは延期すべきの声(世論)もあるが?」と問われると、言葉を選びながらも率直な思いを吐露した。

 貴乃花親方「(精密検査の)結果が悪ければですけど、非常に重要な事態ですので、そういうことを視野に入れないといけない。ファンの皆さんがご心配くださっているうちはいいですが、これが低下していくと相撲協会の団体としての是非が問われます。悪化(の要素)を取り払うことも必要だと思います」。

 今年2月に役員待遇に就任したばかりだが、協会幹部が公の場で発した言葉は重い。パーティー後、あらためて真意を問うと「相撲界はそれだけ重大な局面にきているということです。刑事事件を軽く受け止めてはいけないと思います」と語った。思いつきの発言ではなかった。

 現状で「場所中止」という発想は、他の協会幹部にはない。だが、現実には秋場所初日まであと10日。5日には横綱審議委員会のけいこ総見を迎えるが、話題の中心は土俵外。疑惑が本当なら北の湖理事長の辞任も避けられない中、全力士が相撲に集中できる環境にないことも事実だ。

 同時に貴乃花親方は、今回の協会側の対応も疑問視した。前日2日、関取69人に対して行われた簡易尿検査で露鵬、白露山が陽性反応を示したことを協会が警視庁に報告。任意とはいえ両関取が、検査場の東京・両国国技館から警視庁に連行された。「1人1人の人権を大事にしてあげないと。検査場から警察へ連れて行かれた。我々の神聖な場所、国技館から…。それは理解できない」。05年6月、テレビで自身の協会改革案を語ったことが、当時の協会首脳から「批判」と受け取られ、注意された。以降、公の場では自分の意見をあまり述べてこなかったが、もはや黙ってはいられなかった。

 もちろん、疑惑がシロであってほしいという思いも強くある。「本人たちは『やっていない』と言ってるし、できる限り信じてあげたい。今回の件は不透明なところがあるし、祈るような気持ちでシロであることを願っている。家宅捜索が入って何も出てきてないのはホッとしています」。50、60歳代の親方衆が理事に並ぶ中、角界の浄化、改革に向けて、36歳と若い貴乃花親方への周囲の期待は大きい。現状に危機感を抱く角界関係者の声を代弁した格好だった。