<大相撲秋場所>◇2日目◇15日◇東京・両国国技館

 武蔵川理事長(60=元横綱三重ノ海)の「カミナリ1号」が弟子に落ちた。西前頭16枚目垣添(30=武蔵川)と春日王(31)の一番は呼吸が合わず、4度も仕切り直した。就任早々「立ち合いの厳格化」方針を打ち出した同理事長にとって、見本になってほしい身内がまさかの醜態。鬼の形相で「再指導」を明言した。白鵬(23)と朝青龍(27)の両横綱は、苦しみながらも連勝した。

 会心の連勝スタートなのに、垣添の顔は曇っていた。何かにおびえるように、豪風に力水をつける姿は元気がない。悪い予感は的中した。「いつも早いって言ってるだろ!」。土俵下で審判を務める武蔵川部屋の藤島親方(元大関武双山)から、怒気を含んだ声が飛んだ。

 両手をついて、相手を待つ-。理想的な「手つき」をする垣添だが、いかんせん気持ちがはやる。最初の2度は春日王の手つきが不十分として、行司が止めた。3度目からは春日王が腰を下ろした直後に垣添が連続して突っかけ、貴乃花審判長(元横綱)も鋭い視線を投げつけた。5度目の立ち合いで成立し春日王を押し出したが、館内はため息と失笑に包まれていた。

 垣添

 早かったから、自分が良くない。相手が手をついてから行かないといけないと思うんですけど…。相撲ですから、相手が両手をついてから出ないと。当たり前のことですよね…。

 バツが悪そうに背中を丸め、最後は「反省して明日からは」と前を向いた。だが、師匠でもある武蔵川理事長が「立ち合いの厳格化」を出したばかり。師匠の面目がつぶされ、鬼軍曹の怒りが爆発した。

 藤島親方

 立ち合いが早すぎるというのは、1200回以上、言っている。学習能力がないとしか思えない。立ち合いの意味をはき違えている。少しでも優位に立ちたいのだろうが、見苦しい。明日、指導するのはもちろんだが、その前に師匠に怒られるだろう。

 弟弟子をバッサリ切り捨て、師匠の「カミナリ」も予告した。この日は、初日に忘れた「立ち合いについて」の張り紙が、理事長名で支度部屋に張られたばかりだった。「注意するよ!」と短い言葉で、帰りの車に乗り込んだ武蔵川理事長。その顔は、まさに鬼になっていた…。【近間康隆】