大相撲時津風部屋新弟子死亡事件で、序ノ口力士の時太山(当時17、本名・斉藤俊さん)を暴行し、死亡させたとして傷害致死罪に問われた伊塚雄一郎被告(25)ら兄弟子3被告の第2回公判が8日、名古屋地裁で行われた。部屋関係者の証人尋問が行われ、現時津風親方(元幕内時津海)も出廷。斉藤さんへの暴行指示を否認している先代親方の山本順一被告(58=同罪で起訴)を「情けないと思う」と強く批判した。

 5日に断髪式を終えた時津風親方は「3人とも山本さんにやらされた被害者であり、かわいそうでなりません。師匠は雲の上の存在。業界的にも逆らうには相撲をやめる覚悟が必要。自分が(3被告と)同じ状況でも防げなかったと思う」などと裁判長に訴えた。

 事件当時、同親方は現役で、山本被告は師匠だった。昨年10月、日本相撲協会を解雇される前に山本被告がテレビ出演して斉藤さんへの暴行は兄弟子たちの独断だったと印象づける発言をした。時津海(当時)は3被告に師匠と話すよう指示したが、山本被告は斉藤さんをビール瓶で殴るなど暴行の事実も、暴行を指示したことも「よく覚えていない」ととぼけたという。

 解雇に伴い同被告から部屋を継承した時津風親方は、この経緯も含めて同被告に憤りをみせた。「酒が入るとグダグダと説教し、オレのハンコ1つで(弟子を)首にできると言っていた。事件後、年寄名跡のお金(売上金)を投げ打っても、自分が何とかするといいながら、(暴行指示を否認するとは)情けない」。

 その上で「師匠が絶対ではなく、若い衆の言うこともいいことは聞き入れるようにした方がいい」と話した。「他の部屋でも起こりえたか」との問いにも「絶対にないとは言えない」とした。34歳の師匠の証言と提言は、再発防止を責務とする角界関係者に響くだろうか。【柳田通斉】