<大相撲九州場所>◇4日目◇12日◇福岡国際センター

 東前頭14枚目高見盛(32=東関)が1年前の「悪夢」に翻弄(ほんろう)された。無傷の3連勝で迎えながら4日目に右足首を負傷、5日目から休場した昨年九州場所のことが頭をよぎり、玉乃島(31)に引き落とされ初黒星を喫した。横綱朝青龍に続き、この日から大関魁皇が休場。大関とりの関脇安馬(24)も2敗となって「目玉」が消えていく中、人気者の高見盛の存在は欠かせない。幸い負傷はなく、前向きさを取り戻した。横綱白鵬(23)は1敗を守った。

 「まさか、1年前と同じようなことは…」。邪念を抱いたロボコップはもろかった。立ち合いから腰が高く、当たりに威力がない。意外にも差し手が右、左と2本入って「よしっ、落ち着いて攻めるぞ」と思い腰を落とした瞬間、右足をズルッと滑らせた。「やばい」。そう思うや否や、玉乃島の引き落としをくらい、両手を土俵についてしまった。

 3連勝後の初黒星。支度部屋を出ると、自分に腹を立てていた。「言いたくはないけど、1年前のことが頭によぎってしまった」。昨年九州場所は3連勝で迎えた4日目の嘉風戦で右足根骨はく離骨折(全治6週間)し、5日目から休場した。11日目からの強行出場で、何とか幕内にとどまったつらい思い出があった。

 考え過ぎると力が出ないタイプだ。「相手が分かると眠れない」と言い、翌日の取組表は意識して目に入れない。「明日は○○関ですね」と伝えた記者には「何で言うんだ」と激高したこともある。だがこうして「1日1番」に全神経を注ぎ、取組前には独特のパフォーマンスを見せる32歳は各界には欠かせない存在だ。

 このほど、永谷園とのCM契約を1年間延長した。同社との契約は6年目に突入し、78年から6年間同社と契約した師匠(元関脇高見山)と肩を並べた。現在CM契約している力士は1人だけで、今場所での拍手や声援は休場した魁皇に負けていない。高見盛も置かれた立場を認識している。今場所は例年以上の不入りで、この日も観衆3379人と寂しいが「こういう状況でも来ていただいた方に感謝し、逆にもっといい相撲を見せたくなる」と真顔で話した。

 仮に昨年と同様に負傷し、休場に追い込まれ、7勝以上できなかったら十両陥落は避けられなかった。「確かにケガをしてなくてよかった。そう、前向き、前向き」。プラス思考に戻ったロボコップは、幕内残留に向け、また土俵で全力を尽くす。【柳田通斉】