左ひじ痛で3場所連続休場し、初場所で再起を目指す横綱朝青龍(28=高砂)が、相変わらずの「KY」(空気読めない)けいこで始動した。冬巡業初日の2日、熊本・宇土場所に参加。「横綱の出番は最後」というしきたりを度外視。いきなり土俵で幕内下位力士と7番取った。その後、すぐにけいこ場から離れて、今度は路上で車を足止めして筋トレ。報道陣の気に入らない質問に激怒して会見を打ち切るなど、「オレ流」ぶりは相変わらずだった。

 幕内の申し合いが始まると、朝青龍は5分もしないうちに土俵に塩をまいた。豪風を相手に指名。寄り切りで退けると、栃煌山、木村山、栃乃洋と立て続けに胸を合わせた。幕内中位から下位を相手に7戦全勝。だが動きに以前の切れはなく、重量感もない。それを自覚したのか首をひねり、そのまま土俵外へ。役力士が土俵に入る前に一礼し、けいこ場を離れた。

 けいこは番付下位の力士から土俵に入り、横綱は最後に大関以下に胸を出して締めるのが常識。だが、朝青龍は横綱白鵬がけいこ場に姿を見せる前に、さっさと自分のけいこを終わらせた。他の力士、親方衆もあぜん。大島巡業部長(元大関旭国)は、注意こそしなかったが「もうちょっと土俵にいてくれればいいのに」と不満を漏らした。

 けいこ場を離れても朝青龍の「オレ流」は続いた。会場となった体育館ぞいの道路に出ると、付け人2人とチューブを使ったトレーニングを始めた。「(ひじの筋肉が)多少は弱っているかと思ってね」と説明したが、熱中するあまり、走行していた車を足止めにする一幕もあった。

 殺到した約50人の取材陣への対応も、相変わらずだった。「無理せず少しずつやっていくよ。でも、久々に(力士の)裸を見て、男っていいなと思ったね」と笑顔で話した後、「横審で(初場所休場なら)引退勧告の声も上がってますが」の質問に表情が一変。「いいんじゃないですか。そんなとこで」とぶち切れ、質問を打ち切った。

 もっとも朝青龍効果で約3000人収容の宇土市民体育館は超満員。朝青龍への歓声も一番大きかった。「平日なのに盛り上がってくれてうれしいよ」。20日の沖縄・石垣島場所まで冬巡業の朝青龍劇場は続く。【柳田通斉】