角界の大麻汚染が止まらない。神奈川県警は30日、大麻取締法違反容疑(共同所有)の現行犯で、十両若麒麟(本名・鈴川真一)容疑者(25=尾車)と、ミュージシャンの平野力容疑者(30)を逮捕した。若麒麟容疑者は容疑を認めている。日本相撲協会が昨年9月に実施した抜き打ち尿検査でも、同容疑者はいったんは陽性らしい反応が出るなど、大麻使用の疑惑はあった。角界の大麻汚染問題で日本人力士が逮捕されたのは初。同日夜、同県警は都内の尾車部屋を家宅捜索した。

 調べによると、若麒麟容疑者と平野容疑者は、神奈川県警が、別の薬物事件の捜査で東京・六本木のCD販売店の事務所を家宅捜索した30日午後1時ごろ、乾燥大麻(16グラム)を隠し持っていた疑いを持たれている。県警によると、捜査の際、若麒麟容疑者は応接間でソファに座っており、テーブルの上にティッシュに包んだ乾燥大麻を置いていたが、テーブルの下に投げて隠そうとしたという。

 若麒麟容疑者は「自分で吸うために持っていた。葉巻に混ぜて吸っていた」などと容疑を認めた。別室にいた平野容疑者は、調べにも否認。県警では入手ルートや詳しい動機を2人から事情を聴いており、この日の夜には、尾車部屋を家宅捜索した。

 若麒麟容疑者には、以前から大麻使用の疑惑はあった。元若ノ鵬の大麻所持事件を受け、昨年9月2日に日本相撲協会が実施した抜き打ち尿検査で、若麒麟容疑者は1回目、2回目と陽性とも陰性ともみられる反応が出ていた。3回目で「陰性」と判断されたが、検査現場から解放されたのは、検査開始から約2時間後。その時点で残っていたのは、後に解雇された元露鵬、元白露山と若麒麟の3人だけだった。

 当時、検査に立ち会ったドーピング検査委員会の大西祥平専門委員(慶大教授)は若麒麟について、実名を伏せたまま「1回目、2回目の検査結果がはっきりしなかったが、3回目で陰性と判明した」と話していた。この日、大西委員は「今は何も言えない」と話すにとどめた。

 若麒麟容疑者の大麻使用時期は不明だが、昨年9月の時点で常習性があったと判断されれば、この抜き打ち検査の信頼性が問われることになる。8月に逮捕された元若ノ鵬は起訴猶予となった後の会見で「他に大麻を吸っている力士や親方には、何の処分もされていない」と訴えていた。

 角界をめぐる大麻汚染問題で協会から解雇されたのは、元若ノ鵬、検査で陽性と判断された元露鵬、元白露山といずれもロシア出身力士だった。日本人力士が逮捕されたのは初めて。若麒麟容疑者は、容疑を認めており解雇は必至だ。早ければ2月2日に開かれる定例理事会で処分が決まる。また、同日には尿検査を実施した再発防止検討委員会も開かれる。抜き打ち検査の結果を契機に、北の湖前理事長に代わって就任した武蔵川理事長の責任も、問われることになる。