<大相撲夏場所>◇9日目◇18日◇東京・両国国技館
37歳の西幕下筆頭北桜(北の湖)が、戦後2番目の高齢再十両に大きく前進した。鋭く踏み込んでから右を差し、一気に前に出て臥牙丸(ががまる)を寄り切った。二番相撲からの4連勝で勝ち越し。37歳6カ月で迎える名古屋場所(7月12日初日、愛知県体育館)で十両返り咲きとなれば、元小結大潮の39歳5カ月に次ぐ高齢復帰となる。幕内では横綱白鵬(24)と大関日馬富士(25)が無傷の9連勝。横綱朝青龍(28)と平幕稀勢の里(22)が1敗を守った。
北桜の通算702勝目は、再び「関取」をつかむための価値ある白星になった。幕下では異例の大歓声と拍手…。「感謝なんです。師匠や先輩、後輩、家族、そしてお客さん。声援が背中を押してくれました」。両目は潤んでいた。
悩んだ。十両だった初場所14日目、10敗目を喫して03年夏場所以来の幕下陥落が決定的となった。「腰が軽いし、相撲が悪かった。年齢的にも、もう限界かな、と思った」。その夜、北の湖親方(元横綱)に言われた。「これ勝ったら、って小手先でやってるぞ」。欲と不安が、本来の相撲を失わせていた。このままではやめられない-。千秋楽は初心に戻り、腰に力が入って完勝した。師匠には「まだやらせてください」と申し出た。
周囲に支えられた。幕下に落ち「正直、焦りました。収入がないんですから」。それでも妻と愛娘は、負けた日も「ドンマイ」と明るく迎えてくれた。弟弟子は「雨が降るからやめてくれ」と、ちゃんこの手伝いをさせてくれなかった。ちゃんこ時、師匠は「ここに座れ」と、関取衆と同じ時間に食べさせた。プライドを傷つけまいとする気遣いに「なんとかして応えなきゃと思った」。
「相撲伝道師」の現役続行は、相撲界にとっても大きな力だ。引き揚げる際は、次々とファンに囲まれ、丁寧に写真撮影に応じた。土俵上では大量の塩まきパフォーマンスで盛り上げる。巡業では、少年ファンに相撲に興味を持ってもらおうと、携帯電話の番号を教えることもある。
番付は“生き物”で十両からの陥落数、幕下上位の成績も関係する。ただ十両復帰へ近づいたのは間違いない。37歳6カ月で迎える名古屋場所。再十両となれば、元小結大潮に次ぐ戦後2番目の高齢復帰となる。昨年まで「永遠の26歳」と10歳下の年齢を公言していたベテランは、今は何歳?
と聞かれた。「37歳…ですね。受け入れました。気合入りすぎると、血圧も上がっちゃうんで」。最近は高血圧に悩む「若い衆」は「まずはあと2番、しっかり相撲を取ることです」と声を弾ませた。【近間康隆】

