元横綱大鵬の納谷幸喜氏(69=日刊スポーツ評論家)が27日、相撲界からは初めての文化功労者に選ばれた。政府はこの日、文化功労者15人を選出。同氏は力士として史上最多32回の幕内優勝を飾り、1969年(昭44)から今年まで血液運搬車「大鵬号」を日本赤十字社へ計70台を寄贈するなどの社会貢献活動も評価された。文化功労者の顕彰式は11月4日に都内のホテルで行われる。

 受賞を知らされた納谷氏は、東京・両国国技館で記者会見に応じた。実は都内の病院に検査入院中だったが、一時退院して相撲の聖地で喜びを語った。

 納谷氏

 大変名誉ある賞をいただき、感謝しております。私1人の力ではなく、みなさんのおかげ。支えてくれた家内にも感謝しています。

 相撲界で初の受賞については「昔は相撲界で60歳まで生きる人もあまりいなかったからね。まあ、ありがたいことですよ」と照れ笑いした。

 納谷氏は大相撲史上最多の優勝32回を誇り、日本の高度成長期に君臨した大横綱だった。当時の子どもが大好きなものとして「巨人、大鵬、卵焼き」と呼ばれたほどだ。一代年寄で大鵬部屋を創設し、多くの弟子を育てた上、日本相撲協会の理事も務めた。現在は定年などを経て同協会を離れているが、日刊スポーツでの評論をはじめ、「相撲界のご意見番」として存在感を示しており、全国各地で相撲普及のための講演を行っている。

 会見でも、けいこ不足で淡泊な勝負が増えてきた相撲界の現状に苦言を呈した。「跳んだり逃げたりで、見ていて心が痛くなる。力士はけいこしかないのに、今は何でやらなくなったのか」。朝青龍、白鵬の両横綱についても「取り巻き、後援者から芸能人のように扱われているかもしれないが、勘違いするなと言いたい。横綱、大関は人のかがみにならなければならない」と厳しく指摘した。

 功績は土俵上だけではない。横綱時代から全国に寄贈し続けた献血運搬車「大鵬号」は、今年で終了となったがその数は節目の70台に達した。「自分だけじゃなく、みんなで喜びを分かち合いたかった。人のために、何かをしたかった」と話す。納谷氏は今後も日本赤十字社への寄付などの社会貢献活動を続けていくつもりだ。【柳田通斉】