横綱朝青龍(29=高砂)に、一転して「厳罰回避」の可能性が出てきた。初場所中に朝青龍が泥酔して男性に暴行したとされる問題で、1日に発足した日本相撲協会の調査委員会が2日、個人マネジャー2人を事情聴取。「暴行はなかった」と事件を否定したマネジャー証言に、友綱委員長(元関脇魁輝)は「大げさなものはなかった」と同調。朝青龍本人の聴取にも「(酔って)覚えてないから」と及び腰だった。4日の理事会も中間報告だけで、処分決定は10日に先延ばし。同委員会が「暴行なし」の結論を出せば、矛盾だらけの灰色決着の可能性もある。

 1日に発足した「調査委員会」が、一宮、染谷の朝青龍のマネジャー2人を両国国技館に呼んだ。100分にわたる事情聴取後、友綱委員長(元関脇魁輝)は、染谷マネジャーの証言を明かした。「殴った事実を本人は見ていない。(骨折も)確認できなかった。私は骨折してたら血を流していると思うけど、車の中も表も血痕はなかったと」。

 初場所中の1月16日未明、朝青龍は東京・西麻布で知人男性を殴ったとされている。現場にいたのは朝青龍と被害者、運転手を兼務する染谷マネジャーだけだ。重要証人は運転席にいて、後部座席で2人がもめていたという。友綱委員長は「ただモンゴル語でしゃべってるから、何言ってるかわからなかったと言っている」と話した。

 これまでの朝青龍側の言動とは、あまりにも食い違う証言だ。当初、被害者は個人マネジャーだったとウソをついたが、暴行は否定していない。示談も成立した。暴行がなかったのなら、何を和解したのか。それでも友綱委員長は「彼らが隠しているような雰囲気じゃなかった」。暴行報道も「報道された大げさなものはなかった」と退けた。

 矛盾だらけだ。なぜ被害者は「鼻骨骨折」の診断書を持って麻布署に相談に行ったのか。被害者の言い分も聞くべきだが「警察のほうに話を聞けば…」と消極的。さらに同委員長は「横綱はたぶん、覚えてないんじゃないかなと。何を聞いても、チンプンカンプンみたいで」と当事者の朝青龍の聴取にも及び腰だった。

 協会側の「物わかりの良さ」で、朝青龍は「クビ」を免れるかもしれない。「暴行はなかった」という結論が出れば、対象は「場所中に深夜まで泥酔して騒ぎを起こした」ことだけ。ただ、この行為はすでに武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)から「厳重注意」されている。そうなると「再処分」はつじつまが合わない。

 当初は4日の理事会での処分決定も予定していたが、3日は弁護士の村山外部理事が仕事のため休会。友綱委員長は「2月10日をメドに」とのんびりムードを漂わせる。貴乃花理事誕生とともに高まる「改革」への期待の声。朝青龍への対応を間違えば、失望の声に変わる。【近間康隆】