<大相撲春場所>◇12日目◇25日◇大阪府立体育会館

 横綱白鵬(25)はただ1人全勝を守った。自慢の「傷」だった。全勝をキープした白鵬は、右足親指の左側をすりむいていた。消毒処置しただけの小さな傷。白鵬は、負傷したのに、なぜかうれしそうだ。周囲には「これは相撲がうまい人ができる傷なんだ」と胸を張った。低く、速く動かないとできない傷だという。それぐらい満足いく踏み込みを12日間続け、12個目の白星を積み上げてきた。

 「相撲がうまい」と警戒する琴光喜に「うまさ」で対抗した。突き放してから右を差し、低い体勢で組み合った。「いつも、ああいう相撲になるんでね。よく我慢した」。頭をつけられるとすかさず起こし、左上手を巻き替えにきた瞬間、右まわしを引き付けて前に出る。琴光喜の強引な左上手投げに乗じて体を寄せると、相手は圧力にあっけなく腰から崩れた。大関戦初戦を「いつも通りで」と、難なくクリアした。

 今場所は、下半身の使い方を意識している。両足親指から土俵に着くようにすると、ヒザも遅れずについてくる。イメージは、つま先で履く「雪駄(せった)」で歩く感覚だ。盤石な下半身とともに勝ち続け、単独トップを走る。「自分なりに、いい感じできている」と、通算13度目の優勝、そして5度目の15戦全勝へ、手ごたえは十分だ。【近間康隆】