<大相撲春場所>◇千秋楽◇28日◇大阪府立体育会館

 関脇把瑠都(25=尾上)は、技能賞と敢闘賞をダブル受賞。審判部は大関昇進を諮る理事会の開催を武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)に要請し、31日に「大関把瑠都」が誕生する。

 土俵下で結びの一番を見守った把瑠都は、白鵬が全勝優勝を決めると苦笑いを浮かべて引き揚げた。白鵬が敗れていれば、優勝決定戦の可能性が残っていた。持続していた集中力は途切れ、同時に悔しさがこみ上げた。前日14日目に初めて意識した初優勝は、持ち越しとなった。それでも白鵬以外、4大関すべてに勝って14勝。すでに確実だった大関昇進にだめを押した形だが「もっとうれしそうに笑った方がよかったかな。14勝したことよりも1敗が痛かった」と唇をかんだ。

 この日は大関琴光喜を圧倒した。初めて技能賞を受賞した要因の突っ張りで、立ち合いから寄せ付けず、最後は一気の寄り切り。1場所で4人以上の大関を総なめにしたのは、昨年秋場所に続き2度目となった。過去に68年春場所、69年九州場所で麒麟児(のちの大麒麟)が、それぞれ4人破っており、把瑠都は史上2人目の快挙達成。しかも昨年秋場所は5人の大関を破っている。31日に大関昇進が決まるが「水曜日(31日)に(昇進を伝える使者が)来たら答える」と、心境はけむに巻いた。

 審判部から理事会の開催を要請された武蔵川理事長は「強いという感じがする。14勝はすごいと思う。これからもっと力がつくのでは」と、天井知らずの伸びしろに期待した。もはや大関以上の実力を持っていることは、首脳陣にも認められている。「来場所は次の目標を見つけ、優勝を目指して頑張りたい」。無欲で挑んだ今場所から一転、賜杯への欲も出てきた。

 生まれた時は3000グラムにも満たない普通の子だったが、今では幕内最重量の188キロ、同2番目の198センチまで大きくなった。握力は手が大きすぎて、機械に小指が入らず4本の指で握っても100キロ近くという怪力。規格外のサイズとパワーに「今後は毎場所、横綱に勝つことが目標」と大関の自覚も十分。「小中学生の相撲人気を高めていきたい。強い日本人が出てきた方が盛り上がる」。相撲界の発展を願う、大志を抱いた新大関が誕生する。【高田文太】