相撲界に、また不祥事が起きた。千葉県警印西署は29日、3歳の長男の背中を蹴り、軽いけがを負わせたとして、同県印西市、大相撲出羽海部屋所属の幕下行司、木村林之助こと小林亮太容疑者(32)を傷害の疑いで逮捕した。約1年前から妻(32)が同署に夫による長男への暴力を相談していた。同署では日常的に家庭内暴力をふるっていた可能性があるとみて調べている。近年は親方がビールびんで殴るなどして力士が死亡、関取の大麻所持発覚などの事件が起きていたが、今度は「聖職者」ともいえる行司までも逮捕された。

 出羽海親方(60=元関脇鷲羽山)によると小林容疑者はこの日午前、大阪・堺市内で逮捕されたという。前日28日まで大阪市内で行われていた大相撲春場所のため、堺市内の宿舎にいたところ、3歳の長男への傷害の疑いで身柄を拘束された。都内で会見した出羽海親方は「協会としても私としても残念。私生活のことではあるが、警察の判断を見守りたい」と話した。処分については未定という。

 逮捕容疑は2月27日午後5時45分ごろ、自宅で長男が小林容疑者の靴下をなくしたことに腹を立てて背中を蹴り、全治3日の打撲など軽傷を負わせた疑い。印西署では、日常的に家庭内暴力をふるっていた“DV(ドメスティックバイオレンス)夫”として、妻ら長男以外の家族に対しても同様の行為をした可能性があるとみて、追及している。

 小林容疑者の妻は昨年4月21日、同署を訪れ「夫が長男に暴力をふるう」と、初めて相談していた。小林容疑者が、寝つきが悪く泣いた長男の顔を平手打ちした、などという内容だった。妻は今年1月19日にも110番通報し、同様の内容を同署に相談。同署員が集合住宅にある自宅に駆けつけたが、事態が収まったこともあり、妻は被害届を出さなかったという。

 出羽海親方は「先代の時の弟子。(96年2月に)部屋を継いでから接点を持つようになった。そういううわさもあったが、仕事はまじめで性格も明るかった。まさかという、ただそれだけ」と驚いた。この日、両国国技館で行われた横綱審議委員会に出席した武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は「詳しくは聞いていないから」とだけ話し、足早に引き揚げた。

 容疑となった2月27日の件では、妻は翌28日に同署に直接出向き、夫の長男への暴力を説明し、被害届を出していた。日本相撲協会は「事実関係を確認中」としている。