知人男性に暴行したとして2月に引退した元横綱朝青龍関(29)が、傷害の疑いで書類送検されたことが12日、分かった。元朝青龍関は暴行を否定しているが、警視庁は故意に暴行したと判断。今後は東京地検の判断に委ねられたが、仮に起訴されれば引退相撲(10月3日、東京・両国国技館)の中止は避けられない。くしくもこの日は引退相撲の前売りチケット発売開始日。賭博問題の影響でテレビ中継も消滅した上、警察には「立ち合い」を制せられた形になった。

 元朝青龍関が、警察から強烈な張り手を食らった。捜査関係者によると、警視庁は9日付で東京地検に書類送検。元朝青龍関は5月中旬の事情聴取で「車内で手が当たったかもしれない」と証言していたが、警察は実況見分などで「故意に暴行した」と判断した。

 騒動が起きたのは今年初場所中の1月16日未明。元朝青龍関は東京・六本木のクラブ前で車に乗せた知人男性にけがを負わせたとして、傷害の疑いを持たれた。一貫して暴行を否定してきたが、被害者は捜査に対し、車内で暴行を受けたと説明。警視庁は現役横綱が一般人に暴行し、約1カ月の鼻骨骨折の重傷を負わせたことを重く見て、東京地検に処分を委ねることにした。

 元朝青龍関は騒動の責任を取る形で2月4日に引退した。被害者は被害届を出しておらず、示談も成立している。そのため警視庁は「しかるべき処分を求める」と、起訴を求めない意見書を添えた。現時点で起訴される可能性は低いが、東京地検がどう判断を下すか、元朝青龍関にとっては予断を許さない状況。ある相撲協会幹部は「送検は想定内。ただ、起訴されれば引退相撲はできないだろう」と指摘した。

 元朝青龍関は、10月3日に東京・両国国技館で「引退断髪披露大相撲」を行う予定。くしくもこの日が、前売り券の発売開始日だった。升席が即日完売し、残るのはいす席だけと滑り出し上々。ただ一転して「中止」となれば、3億円といわれる収入が吹っ飛ぶことになる。引退相撲事務局の担当者は「それ(書類送検)に関しては、こちらから申し上げることは何もありません」と淡々と話した。

 さらに、賭博問題の余波まで受けている。元朝青龍関サイドは複数のテレビ局に「引退相撲中継」を持ちかけていたが、その最中に古巣の野球賭博問題が発覚。相撲協会関係者が「せめて年内は力士のテレビ出演を自粛したい」という状況で、各局も撤退していった。元朝青龍関サイドは多額の中継料を見込んで食い下がったが、最近になって断念したという。

 元朝青龍関の師匠だった高砂親方(元大関朝潮)は「今のままなら問題ないだろうが、起訴されたら考えないといけない」と話し、引退相撲中止も視野に入れる。周囲の危機感そっちのけで、お気楽な生活を送っている元横綱。まさかの事態も想定しておいたほうが、良さそうだ。