大相撲の野球賭博と暴力団問題を受けて、「大相撲トーナメント」を中継するフジテレビの豊田皓社長(64)が30日、「改革がどこまで進むのか注視し、推移を見たい」と話し、来年2月の中継の有無について検討中である考えを示した。都内で行われた定例会見で明らかにした。

 NHKが7月の名古屋場所の中継を中止し、大きな反響を呼んだばかり。豊田社長は、名古屋場所の放送中止後にNHK福地茂雄会長と会って話し合ったという。「中止はNHKさんのご判断なので。最近会長ともお話をしたが大変反響が大きかったということだった。声なき声もあるだろうが(相撲協会が)あれだけの批判を受けて、妥当な判断だと思う」と話した。

 フジテレビが勧進元として毎年中継してきた大相撲トーナメントは第1回が77年に行われ、今年で34回目を迎えた。固定ファンも多いが、豊田社長は中継の有無について「視聴者の皆さんの目線や考えを尊重して判断したい」と慎重な姿勢。名古屋場所で53年5月の放送以来初めて中継を中止したNHKも、9月の秋場所について「まだ放送するかどうか決まっていない」という。

 名古屋場所は終了したが、今も佐ノ山親方(元大関千代大海)の野球賭博疑惑を、特別調査委員会が継続調査するなど余波が続いている。NHKが中継中止を決めた最大の理由となった、反社会的勢力と決別するための具体的な改革案が見えない、という点は変わっていない。29日に村山理事長代行らが監督官庁の文部科学省を訪問した際にも、川端達夫大臣からその点を指摘されていた。現状が続けばNHKに続いてフジテレビも手を引かざるをえない。お茶の間から相撲中継が、完全消滅する可能性が出てきた。