<大相撲秋場所>◇14日目◇25日◇両国国技館

 横綱白鵬(25=宮城野)が初の4連覇を決めた。2敗だった平幕の嘉風(28)と豪風(31)がともに敗れたため、取組前に16度目の優勝が決定。結びでは大関琴欧洲(27)を寄り切って、初場所14日目からの連勝を「61」に伸ばした。これまで2度、先輩横綱の朝青龍に阻まれた念願の4場所連続Vを達成。賭博問題で危機を迎えた相撲界の将来を憂い、強さを見せながら「相撲伝道師」を目指す。千秋楽で大関日馬富士(26)に勝てば、双葉山と大鵬に並んで歴代トップとなる8度目の全勝優勝になる。

 三度目の正直だった。白鵬の史上10人目となる4連覇は、あっさりと決まった。取組前、付け人の肩を借りてさがりをつけながら、横目でテレビを見る。嘉風に続いて豪風も敗れ、16度目の優勝が決まった。「今まで4場所連続はなかったので。達成感がありますね」。08年春、09年初場所では、いずれも朝青龍に4連覇を阻まれただけに、感慨深げだった。

 優勝が決まっても、手綱は緩めなかった。相手は、昨年夏場所に連勝を33で止められた琴欧洲。立ち合いで左前まわしをガッチリつかむと、命綱を1度も離さなかった。徳俵で残した長身大関に寄り戻されたが、左上手の投げで崩し、再び寄り立てる。最後は必死に体を預けて寄り切り。ともに土俵下まで落ちる勢いで、61連勝を決めた。

 強さを見せながら、相撲の魅力を伝えたい-。生まれはモンゴルでも、「国技」相撲を愛する気持ちは人一倍強い。だからこそ、今訪れている「危機」を感じている。この春、大阪のある相撲道場が閉まった。宮城野部屋の元力士、朝井英治さん(40)が指導していた公設の浪速武道館。28年の歴史を誇り、十両栃乃若らを輩出した名門だ。白鵬も、けいこをつけに何度か出向いたことがある。

 閉館の理由は、行政の「仕分け」だった。将来を担う少年力士が減る現状にショックを受け、白鵬は朝井さんに1時間も訴えた。「現役横綱である今だからこそ、できることがある。相撲人口を増やす活動をしましょう」。今夏にはモンゴルで少年相撲大会を開催。朝井さんも奔走し、12月19日には大阪・堺で「白鵬杯」を行うことになった。単発のイベントにはせず、「日本一の大会」を目指す本気度だ。

 賭博問題で揺れた先場所は「賜杯」がなく涙した。時には「国技をつぶす気か」とも言った。一方で角界を見渡し、反省もする。今場所前には神奈川後援会の幹部に「新弟子がしっかり育つよう、中堅力士を指導したい。今の相撲界に欠如しているものを、もう1度取り戻したい」と熱い気持ちを吐露した。場所中のけいこでも体中を砂だらけにし、若い衆に胸を出す。「昔から侍として生きてきて、今は力士だけ『まげ』がある。今がどうこうじゃない、歴史がある。相撲が終われば、この国は終わると思う。オレはそれぐらいの強い意志を持っている」。

 千秋楽に勝てば、4場所連続8度目の全勝優勝になる。過去、双葉山と大鵬しか達成したことがない数字に「偉大な先輩に並びたい気持ちはあります」と口もとを引き締めた。初日から14連勝した過去7度は、いずれも15戦全勝。「優勝も全勝も両方意識していた。いい刺激を受けながら」という無敵横綱は、全勝V率100%の楽日もしっかりと締める。【近間康隆】