横綱白鵬(25=宮城野)が7月に発言した「国技を潰(つぶ)す気か」が、12日に発表されたユーキャン2010新語・流行語大賞の候補語にノミネートされた。大賞の発表は12月1日。62連勝中の白鵬は、明日14日に初日を迎える九州場所(福岡国際センター)で、双葉山の69連勝に挑戦する。この日は取組編成会議で初日、2日目の相手も決まった。暗い話題が多かった今年の角界だが、記録達成&大賞受賞で、白鵬が土俵の内外に福を呼ぶ。

 本場所2日前に、朗報が舞い込んだ。白鵬の発言が、新語・流行語大賞の候補語60語に入った。「現代用語の基礎知識」(自由国民社)読者審査員のアンケートで選出されたもので、来月1日に審査委員会(藤本義一委員長)らによって大賞とトップ10が決まる。角界でノミネートは、91年に流行語部門金賞の「若貴」以来となった。

 これまで角界関係者の大賞受賞はない。同賞の牧岡事務局長は「比較的、お相撲さんはしゃべらない。でも、この発言はいい意味で取り上げられた。相撲への愛情から出てきた言葉だと思う」と説明した。

 白鵬が発言したのは、7月8日。野球賭博問題の影響から、日本相撲協会が優勝旗以外すべての表彰を辞退したことを受け「何か、自分たちの手で国技をつぶすのではないかという気がします」などと言った。相撲協会への「物言い」だったが、力士の思いを代弁したものとして、世間に好意的に受け止められていた。

 以来、白鵬は角界を引っ張り続け、連勝は「62」まで伸びた。この日、取組編成会議が開かれ、対戦相手は初日が栃ノ心、2日目は稀勢の里に決まった。白鵬は前夜から家族と過ごすなど、完全休養だったが、部屋関係者を通じて「いろいろなことを考えずに、今まで通り頑張ります」とコメントした。

 今場所は、双葉山の69連勝への挑戦が最大の話題だが、記録に並ぶ7日目、70連勝がかかる中日も含め、チケットが完売した日はまだない。九州場所担当の鏡山部長(元関脇多賀竜)は「記録が伸びたら、お客さんはもっと興味を持ってくれる」と白鵬効果に期待した。

 双葉山を抜けば、流行語大賞を含めた表彰ラッシュの機運が、さらに盛り上がることは間違いない。暗い話題が続いた今年の角界は、年末にハッピーエンドで締めくくれるか。土俵の中も外も、すべては白鵬にかかっている。【佐々木一郎】