警視庁が昨年7月に野球賭博捜査で力士から押収した携帯電話に、勝ち星を数十万円で売買したと思われるメールがあったことが2日、明らかになった。放駒理事長(62=元大関魁傑)は即座に緊急理事会を開き、疑惑のある親方と力士13人中12人から事情聴取した。

 大相撲の監督官庁である文部科学省が「国技」の看板を剥奪する構えを見せた。スポーツ・青少年局競技スポーツ課の芦立訓課長が、都内の同省で報道陣の取材に応じた。八百長が認められた場合について「大相撲の存続にかかわる問題」と、公益法人として認可されない確率が高いと指摘。日本相撲協会が積み立てた内部留保金の国庫返納、両国国技館の返上を通達する可能性を挙げた。

 文科省が動きだした。この日午前、警察庁から大相撲の八百長を思わせる数々の資料が文科省に届いた。これを受けて同省は日本相撲協会に連絡。昨夏からの野球賭博事件で、何度となく厳しい言葉を相撲協会に投げかけながらも、再生を待ってきた文科省の芦立課長は、今回の八百長疑惑には「大相撲の存続にかかわる問題。調査しても浄化できないというのであれば、法人格を取るのは難しい」とバッサリ切った。

 政府の公益法人制度改革に伴い、相撲協会など現在の公益法人は13年11月末までに審査を受けなければならない。審査によって、最も税制優遇措置のある公益法人に認可されるかどうかが決まる。相撲協会は引き続き、公益法人を目指しているが、芦立課長は「相撲協会は、真摯(しんし)な力と力のぶつかり合いを見せることに公益性を主張している。そこが仮に八百長で汚染されているのであれば、公益法人といえるのか疑問が残る」と訴えた。

 公益法人でなくなった場合について、同課長は(1)内部留保金の国庫返納(2)両国国技館返上の可能性が高まると指摘した。相撲協会は毎年黒字で、利益分は内部留保金として蓄えられている。それも公益事業として挙げた利益のため、国に返す必要があるという。国技館も同様の理由で、芦立課長は「同じような趣旨の団体があれば、そちらに寄付するなど手放さなければならないかもしれない」と、事実上「国技」の看板を剥奪する可能性を挙げた。

 相撲が「国技」でなくなってしまえば、各種プロレス、格闘技団体と同様として扱われ、税制優遇措置もなくなり、相撲協会の運営そのものが厳しい局面に立たされることになる。

 この日発足した特別調査委員会についても、文科省が指示したものだった。芦立課長は「野球賭博の時は捜査状況などの兼ね合いもあって早急にできない面もあったが、今回はすぐに解明に取り組んでもらう。1~2週間ほどでやらなければならない」と、迅速な調査を求めた。この日の特別調査委員会の内容も含め、早ければ今日3日にも相撲協会関係者を文科省に呼び、進行状況を聞くという。

 角界の八百長はこれまでにも「元小結板井」の板井圭介氏が、00年に日本外国特派員協会での講演で、その存在を認める発言をするなど度々問題視された。板井氏の例を挙げて質問された芦立課長は「昔から疑惑のあった案件もあるので、必要があれば『八百長があった』と言っていた人に、意見を聞くべきでは」と明言。特別調査委員会の調査対象が、現役力士以外に広がる可能性も出てきた。